菅野美穂と松嶋菜々子、女優として成熟期へ 『砂の塔』『べっぴんさん』それぞれの魅力

 女優としての菅野の面白さは、隠しきれない過剰な内面が演技ににじみ出ているところだ。『イグアナの娘』(テレビ朝日系)等の初期の代表作は繊細な美少女としての魅力がアイドル的な人気へとつながっていたが、20歳でヘアヌード写真集を出版したあたりから、過剰な自意識を持て余した大人の女性を演じることが上手い女優へと脱皮していく。朝ドラの『ちゅらさん』(NHK)で演じたヒロインに説教しながらも温かく見守る絵本作家の城ノ内真理亜は、そんな彼女の代表作だが、『べっぴんさん』の落ち着いた語りを見ていると、真理亜ちゃんも大人になったんだなぁと思う。

 奇しくも、『べっぴんさん』の主題歌がMr.Childrenの「ヒカリノアトリエ」、『砂の塔』がTHE YELLOW MONKEYの「砂の塔」と、菅野と同じ90年代後半に頭角を現したベテランミュージシャンが主題歌を担当している。 特に「ヒカリノアトリエ」は「CROSS ROAD」や「innocent world」といった初期ミスチルの代表曲のテイストのためか、どこか懐かしく、OPの作り込んだ映像といっしょに毎日見ていると、母親になった菅野が娘に読み聞かせている絵本のような物語に見えてくる。『砂の塔』の亜紀も、母親としての強さが滲み出ており、女優としての成熟を感じさせる。

 菅野や松嶋のように、いつの間にか母親役を演じるようになった同世代の女優たちを見ていると、ドラマでは描かれない亜紀や弓子の若い頃が頭に浮かんでくる。こういった見方ができるのもテレビドラマの面白さだろう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『べっぴんさん』
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土)  午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分     
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/beppinsan/

『砂の塔〜知りすぎた隣人』
毎週金曜22時〜
出演:菅野美穂、岩田剛典(EXILE/三代目 J Soul Brothers)、田中直樹 (ココリコ)、松嶋菜々子
脚本:池田奈津子
音楽:横山克
主題歌:THE YELLOW MONKEY「砂の塔」
編成:高橋正尚
プロデューサー:浅野敦也
演出:塚原あゆ子、平野俊一、棚澤孝義
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる