北米公開の『シン・ゴジラ』、現地の反応は? 米国在住ライターが配給戦略を分析

北米公開の『シン・ゴジラ』、その評価は?

 ところで、『シン・ゴジラ』のアメリカでの評価はいかなるものだったのだろうか。映画批評サイトRotten TomatoesのTomato Materでは一般81%、プロによる評価は75%と概ね好評だ。

 Indiewire誌は総合評価にB−をつけながらも、「モンスター映画の王者は最も風変わりな作品で復活した。ほぼ官邸内で繰り広げられる最初のゴジラ映画へようこそ! 東宝が新しいゴジラ映画に『エヴァンゲリオン』の庵野秀明を指名した時点で思惑通りの出来栄えだ」と好意的に書いている。

 ニューヨークタイムズ紙は、『物語は大雑把でついていけず、風変わりなキャラクターや日本の観客にしかウケないカメオ出演ばかり。これは怪獣映画ではなく風刺映画だ。オリジナルのゴジラ同様、2016年のゴジラは核問題をはらんでいる。日米の愛憎相半ばする関係も示唆しながら』と手厳しいながらも的確に評している。

 筆者が訪れた2回の上映でも、黒いゴジラTシャツを着込んだオタクファンたちで満席の劇場はゴジラ登場に歓喜の声をあげるのではなく、日本政府の意思決定の鈍さに失笑が漏れていた。ちなみに、石原さとみが演じたカヨコが発するセリフは日本語・英語ともに英語字幕がつけられていたのだが、米国大統領特使という特異なキャラクター設定を疑問視する向きはみられなかった。

(文=小川詩子/米国在住)

Shin Godzilla オフィシャルサイト:
http://www.funimationfilms.com/movie/shingodzilla/

■公開情報
『シン・ゴジラ』
全国東宝系にて公開中
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ
脚本・総監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括:尾上克郎
音楽:鷺巣詩郎
(c)2016 TOHO CO.,LTD.
公式サイト:http://www.shin-godzilla.jp/

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