二階堂ふみのラブシーンはなぜグッとくるのか? 『SCOOP!』の成熟に見る“心のヌード”

二階堂ふみ、ラブシーンの素晴らしさ

 10代の頃は、その若さやあどけなさに自覚的で、年上男性を翻弄する小悪魔的なラブシーンを演じていた二階堂ふみ。しかし、今回のラブシーンはどちらかというと受動的で、自らの“雰囲気”を巧みに変えながら、福山演じる静をその気にさせている。劇中で相手に“性的な成熟”を悟らせる演技に、20代となった二階堂の女優としての懐の深さを感じずにはいられない。仕事現場の暗い雰囲気とは対照的に、自然光が多く入る白を基調とした部屋で撮られた二階堂の表情はひときわ生々しく、大根監督の演出の確かさを感じさせた。

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 今作で披露されるラブシーンは、一度きりではあるが、だからこそ特別なものとして観客たちの心に残るはずである。師弟バディもので、恋愛関係に発展してしまうのは、人によっては受け入れがたいところもあるだろう。しかし、エロス表現における巧者ふたりによるラブシーンは美しく、物語のラストに感慨深ささえ与えている。福山ワールドを壊さずに、その懐に入りながら自分の色をしっかりと残す二階堂は、やはり只者ではない。

 ところで、『SCOOP!』を劇場で観た際に、三浦大輔監督『何者』の予告編も観ることができた。二階堂はこの作品で、佐藤健や有村架純、菅田将暉といった同世代の実力派俳優たちとともに、等身大の役柄を演じるようだ。『密のあわれ』では、幻想的な世界観の中で浮世離れした妖艶さを披露し、『SCOOP!』では“心のヌード”ともいうべき自然な演技でひとりの女性の性的成熟を表現した二階堂。その演技の幅広さ、唯一無二のセクシーさは、今後さらに多くの作品で必要とされることだろう。いい意味で我々を裏切り、刺激を与え続けてくれることを願ってやまない。

(文=本 手)

■公開情報
『SCOOP!』
全国公開中
監督・脚本:大根仁
出演:福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキー
(c)2016「SCOOP!」製作委員会
公式サイト:scoop-movie.jp

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