イーストウッドは「洋画」最後のブランド? 『ハドソン川の奇跡』のヒットを考える

『ハドソン川の奇跡』のヒットを考える

 ふと見渡してみて、今、「洋画」の世界にその名前だけで観客を呼ぶができる監督がはたして何人いるだろうか? 先々週公開されたスピルバーグの新作『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の惨敗が象徴してしまったように、監督の名前で大勢の観客を呼ぶことができる時代は、少なくとも「洋画」の世界ではもう終わってしまった(ウディ・アレンに代表されるような小規模公開の文芸/アート系作品の監督ではまだギリギリ何人かいるが)。そんな中、1971年の『恐怖のメロディ』から役者兼監督としてのキャリアを重ね、45年以上にわたって傑作を撮り続けてきたイーストウッド監督の歩みの偉大さに、改めて畏怖の念を感じずにはいられない。イーストウッドは現在86歳。かつて日本において「洋画のブランド」であった前述したすべての監督たちよりも、彼は一世代も二世代も上なのだ。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。 Twitter

■公開情報
『ハドソン川の奇跡』
全国公開中
監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2016 Warner Bros. All Rights Reserved
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/hudson-kiseki/

■書籍情報
『機長、究極の決断「ハドソン川」の奇跡』
発売中
著者:C.サレンバーガー
刊行:静山社文庫

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