『ポケモン』『デジモン』『妖怪ウォッチ』……映画作品から読み解く、それぞれの戦略

 とはいえ、『妖怪ウォッチ』が順風満帆かといえば、そうとも言い切れない。劇場用アニメ第1弾の『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』(14年)こそ、興行収入78億円で、『ポケモン』シリーズの最大ヒット作である『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(98年)の興行収入76億円を超えたものの、続く第2弾『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』は興行収入55億円に。アニメの視聴率も、2014年には5〜6%台を推移する人気作だったが、昨今では3%台に落ち着いている。今年の12月に公開される劇場用アニメ第3弾の『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶ鯨とダブル世界の大冒険だニャン!』は、実写とアニメを融合させて、より現実世界に近付いた作風が話題を呼んでいる。これまでも親世代が懐かしむ小ネタを散りばめたり、人気タレントの声優起用によって、世代を問わず人気を獲得してきただけに、その真価が問われることになるだろう。

 もっとも、『デジモン』は現実の世界と、空想上のサイバー世界を明確に二分して行き来するわけだから、現実的という意味では『妖怪ウォッチ』以上である。しかし、サイバー世界はファンタジーというよりSFのライン上で、モンスターの存在こそファンタジーであっても、今度は現実的すぎるという難点が生じるわけだ。その設定は作品の根本でもあるだけに、もしかすると初めからいずれ大人向けにシフトすることを予期していたのではないだろうか。

 97年当時は同じターゲットラインにいたはずの『ポケモン』を置き去りにして、『デジモン』は子供向けアニメの枠から抜け出していった。それを『デジモン』新シリーズが証明している中で、『ポケモン』は『ポケモンGO』として、VR機能を駆使して現実世界にモンスターを登場させるゲームアプリを発表したわけだ。これはまさに『デジモン』と『妖怪ウォッチ』がやってきたことに、今度は王者『ポケモン』が追随しているように思える。

 しかも、そんな『ポケモンGO』に一番熱狂しているのは、今の子供達よりも子供の頃にポケモンに熱中した世代ではないだろうか。今度は『ポケモン』が『妖怪ウォッチ』以上に、大人世代も視野に入れた作品を作る時期が来ているのかもしれない。そうなれば『ポケモン』もまた、90年代後半から2000年代にかけて子供だった世代=“モンスター世代”を象徴するアニメとして今後も安定した地位を築いていくのではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■作品情報
『デジモンアドベンチャー tri. 第3章「告白」』
3週間限定劇場上映/劇場限定版Blu-ray先行発売/先行有料配信
2016年9月24日(土) 同時スタート
一般販売版Blu-ray&DVD 2016年11月2日(水) 発売
公式サイト:http://digimon-adventure.net/
(C)本郷あきよし・東映アニメーション

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