『カンフー・パンダ』はなぜ映画ファンに愛される? マイペースに築き上げた不動の作品世界

『カンフー・パンダ』シリーズの不動の魅力

裏でシリーズを支える名クリエイターたち

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 実は本作の太ったパンダとともに世界的に一躍有名になった存在がある。それが1作目では流麗なプロローグ場面を担当し、さらに2作目以降は監督としてシリーズを指揮したジェニファー・ユーだ。韓国生まれの彼女は、4歳の頃に両親とともにアメリカへと渡った際、まさか自分がハリウッド史上初の“単独でアニメーション大作を手がける女性監督”になるなんて想像もしなかったはずだ。

 また彼女だけではなく、さらなる裏方にも注目してほしい。例えば『カンフー・パンダ2』ではあの奇才チャーリー・カウフマンがノークレジットで脚本監修に関わっているのだ。『エターナル・サンシャイン』や『アダプテーション』をはじめ数々の奇想天外な作品で知られる彼は、娘と一緒に一作目の『カンフー・パンダ』を観た時にすっかりファンになったらしく今回の関与へとつながったようだ。彼の参加がどのような影響を与えたのかについては公にされてはいないが、過去と現在を交錯させながら若干複雑に歩を進めていく場面など、様々なところにカウフマンっぽさを感じながら観るのも一つの楽しみ方と言えよう。

 これに加えて、『パシフィック・リム』や『パンズ・ラビリンス』で知られるギレルモ・デル・トロも2作目でクリエイティヴ・コンサルタントとして参加。1作目に比べてややダークな色彩になったのは彼の影響かもしれない。さらにデル・トロは『カンフー・パンダ3』でも製作総指揮として名を連ねている。前作に比べるとダークさは払拭され、あくまで明るい雰囲気の中で主人公のルーツにまつわるストーリーが推し進められていくものの、登場するキャラクターにはやはりデル・トロ作品に通底するようなバックグラウンドへのこだわりが見て取れて面白い。

 このように子どもだけでなくあらゆる年代に訴求力を発揮し、何よりも見ているだけでコミカルに心が弾む『カンフー・パンダ』シリーズ。秋の夜長、ちょっとメランコリックに陥った時には、ぜひこの太ったパンダの造形に癒され、なおかつ彼のガムシャラな奮闘に元気をもらってほしい。もちろん、親子そろって楽しむのにも打ってつけのシリーズである。チャーリー・カウフマン同様、お子さんと何気なく観ながら「おっ、面白いじゃん!」とファンになってしまう人もきっと少なからずいるはずだ。

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter

■配信情報
Netflixオリジナル『カンフー・パンダ3』
Netflixにてオンラインストリーミング中
監督:アレッサンドロ・カルローニ、ジェニファー・ユー・ネルソン
脚本:ジョナサン・エイベル&グレン・バーガー
英語吹き替えキャスト:ジャック・ブラック、アンジェリーナ・ジョリー、ダスティン・ホフマン、ジャッキー・チェン、セス・ローゲン、ルーシー・リュー、デヴィッド・クロスほか
(c)2016 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.netflix.com/jp/

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