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『カンフー・パンダ』はなぜ映画ファンに愛される? マイペースに築き上げた不動の作品世界

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 カンフーとパンダ。一見、安易とも取られかねない二つの要素の組み合わせではあるが、蓋を開けてみると08年公開の『カンフー・パンダ』はご存知のように世界中で大ヒットを巻き起こした。興行を紐解けば1作目は世界興収6億3千万ドルを突破(そのうち米割合は35パーセント)。2作目になると6億6500万ドル(米は25パーセント)、そして16年に公開された3作目でもなお5億2千万ドル(米は28パーセント)を稼ぎ出し、いずれも安定した高い人気を博していることを証明した。では何がそこまで人々を惹きつけるのか。現在、Netflixにて『カンフー・パンダ3』が独占配信中ということもあり(1作目、2作目も視聴可能)、改めて爆発的な人気を誇るその魅力について迫ってみたい。

往年のカンフー映画へのオマージュたっぷり

 おなじみジャック・ブラックが持ち前の大きなお腹を振り回しながら声優を務めるこのパンダのキャラクター。その名は“ポー”と言う。彼は最初、カンフーの使い手でもなんでもなく、父と一緒に料理店を営む単なる太った青年に過ぎなかった。ちなみにこの父、なぜかガチョウである。それでも当たり前のようにストーリーは進んでいく。なんというシュールさだろう。

 そんなポーが、ひょんなことからカンフーの殿堂に足を踏み入れ、老師から「お前は“龍の戦士”だ!」などと妙なお告げを受けてしまったものだからもう大変。腕前は素人以下、食欲だけは百人前。そんな彼は、凄腕のライバルたち(アンジェリーナ・ジョリー、ルーシー・リュー、ジェッキー・チェン)と切磋琢磨しあいながら、お師匠様(ダスティン・ホフマン)の厳しい特訓に耐えて強くなり、やがて最強の敵と対峙することになるのだが……。

 登場人物は『ズートピア』と同じくあらゆるものが野生動物だが、そのストーリー構成はまさしく、かつてジャッキー・チェンがキャリア初期に出演していた『蛇拳』『酔拳』『笑拳』などの名作カンフー映画そのもの。これらの作品に触れて育った年代にとっては垂涎モノの展開と言えるだろう。
 
 ちなみにこれがシリーズ2作目になると、趣向もガラリと変わる。扇と飛び道具を扱う強敵クジャク(ゲイリー・オールドマン)が現れ、彼が率いる大軍との戦いを余儀なくされるそのスケールの大きさは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』や『レッドクリフ』をも彷彿とさせるほど圧倒的だ。そして3作目ではさらに趣向がチェンジ。SFファンタジーの要素を加味しながら主人公のルーツに迫りつつも、最後は『七人の侍』のように、襲い来る無数の敵から故郷の村を守ろうと、みんなの力を総結集させて迎え撃つ。かくも前作の焼き直しではなく、一作ごとに異なる魅力を構築してみせるところにも作り手の深いこだわりが感じられる。

エンタメ重視。絵の質感やカンフーの動きにも注目

 ディズニーを始めとして、世界で脚光をあびるアニメーション大作の多くは子供を魅了する可愛らしい画風の中に鋭い社会風刺や寓話性、隠れたメッセージを挟み込ませることが多い。その点、『カンフー・パンダ』はどうかというと、一見、何も考えていなさそうに見えて、本当に何にも考えていない。カンフーについてボンヤリと憧れを持っていた青年が、自分の夢を掴むためガムシャラに挑戦の道を歩み始める。それ以上でもそれ以下でもなく、かなり直球勝負と言っていい。当然、中国という市場も見据えた上での方向性の選択もあるのだろう(検閲制度ゆえに体制批判、社会風刺とも受け取れかねない描写はNGとなるのは容易に想像がつく)。そのため画質やタッチ、ストーリーも単純明快で“裏読み”する余地はない。このようにしてキャラクター同士のユニークなセリフの応酬が楽しく、一方のアクションにも視覚的、体感的な面白さがふんだんに詰まった快作が誕生したわけだ。

 まるで『アナと雪の女王』のミュージカル場面のごとく頻繁に登場するカンフー・シークエンスを描きこむにあたっては、アニメーターが事前にカンフーレッスンを受講して様々な身のこなしを叩き込んだ上で制作に臨んだのだとか。さらにはマーシャルアーツ・コレオグラファーなどもいて、一瞬のうちに突きや蹴りを連発するその一挙手一投足をきちんと“魅せるためのカンフー”に高めているのも、かつてユエン・ウーピンなどが武術指導を務めた往年のカンフー映画、あるいはその影響を受けたハリウッドのマーシャルアーツ映画のこだわりと共通するところがある。それゆえリズムとテンポの宝庫たるアクション・シーンは見ているだけで身体が小刻みに反応してしまうほど。さらに、従来のCGっぽいタッチのみならず、水墨画や影絵のようなアジアの伝統美を駆使して紡がれる質感もまた人々の心を射抜く一つの要素となり得ている。

      

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