妻夫木聡、綾野剛とのラブシーンが美しい理由ーー『怒り』優馬役に漂う、儚さと愛おしさ

妻夫木聡『怒り』優馬役に漂う、儚さと愛おしさ

 二人は役柄同様に、撮影中は同棲生活を送りながら互いの距離を埋めていったという。役者はカメラの前で、その肉体をさらけ出す。一方で、カメラは役者の“背景”も色濃く映し出す。目には見えないが確かに刻まれている“空気”。彼等のラブシーンが胸を打つのは、その“空気”に嘘がないからだ。

 思えば妻夫木は、出世作『ウォーターボーイズ』をはじめ、『69 sixty nine』『マイ・バック・ページ』『黄金を抱いて翔べ』『バンクーバーの朝日』など、男と男の繋がりを描く作品で輝いてきた役者だ。本作のような直接的な形ではないものの、同性を強く惹きつける天性の魅力が、彼にはあるのだろう。その艶やかな立ち振る舞いは、彼が30代半ばとなったいま、いっそう誘惑的なものとなり、私の心をかき乱して止まない。

(文=石井達也)

■公開情報
『怒り』
全国東宝系にて公開中
監督・脚本:李相日
原作:吉田修一「怒り」(中央公論新社刊)
出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、佐久本宝、ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、原日出子、池脇千鶴、宮崎あおい、妻夫木聡
配給:東宝
(c)2016映画「怒り」製作委員会
公式サイト:www.ikari-movie.com

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