アンチ・ヒーローたちの下克上!? アメコミ映画の新局面を切りひらいた『スーサイド・スクワッド』

『スーサイド・スクワッド』が大健闘

 今回の『スーサイド・スクワッド』大健闘の興味深いところは、事前にアメコミ映画ファンの間では「本国で大ヒット」という情報と同時に、作品内容に関しては「賛否両論」という噂も共有されていたこと。これは、今年3月に日本公開された『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にも共通する近年のワーナー配給のDC作品の傾向でもあるのだが、『スーサイド・スクワッド』の方はアメリカ本国でアメコミ映画ファン以外の新たな客層を開拓して、完全に初動型だった『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』とは異なるロングヒット型のヒットを実現した。

 日本でも同様に、『スーサイド・スクワッド』がアメコミ映画の新たな起爆剤になるかどうかは今後の推移次第だが、先月日本公開されて惨敗に終わった『X-MEN:アポカリプス』のような旧来のフランチャイズが後退している一方で、『デッドプール』や『スーサイド・スクワッド』のようなフレッシュなフランチャイズが日本でも支持されつつあることは数字が証明している。両作の共通点はアンチ・ヒーロー&悪ノリ・コメディ要素。まぁ、アイアンマンやバットマンといったアメコミ映画のメインストリームまで完全にそのノリに染まってしまったら、それはそれで困るのだけれど。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。 Twitter

■公開情報
『スーサイド・スクワッド』
全国公開中
監督・脚本:デヴィッド・エアー
製作:チャールズ・ローブン、コリン・ウィルソン、リチャード・サックル
出演:ウィル・スミス、ジョエル・キナマン、マーゴット・ロビージャレッド・レト、ジェイ・コートニー、カーラ・デルヴィーニュ、福原かれん
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/suicidesquad/

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