『青空エール』で注目! 葉山奨之、話題作起用の理由は“怒り”の演技にアリ

唯一無二の“怒り演技” 俳優・葉山奨之

 唯一無二の存在感を持つ俳優として、葉山奨之が輝きを放っている。昨晩最終回を迎えたテレビドラマ『死幣 DEATH CASH』をはじめ、公開中の『青空エール』、公開待機作の『アズミ・ハルコは行方不明』、『古都』、『きょうのキラ君』など、テレビ、映画でその姿を目にする機会が多くなってきた。そして、役の大小を関わらず、どの作品を切り取っても、“葉山奨之”の“痕跡”をいつも残している。クールな演技を披露したかと思えば、正統派イケメンにもなり、時にはコメディリリーフにもなれる。いわゆるカメレオン役者ぶりを発揮しているのだが、その中でも彼の“怒り”演技にはすさまじいものがある。

 強く印象付けられたのが、映画『十字架』の演技だ。学校内のいじめによって、自殺した兄の弟・健介という非常にハードな役を葉山は演じている。兄の遺書によって“親友”とされた小出恵介扮する主人公・ユウが、遺族に自分は親友ではなかったと告白するシーン。ここで見せる葉山の演技には鳥肌がたった。

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(c)重松清/講談社/(c)2015「十字架」製作委員会

 ユウはそれまで強いられた犠牲に対し、やり場のない思いを遺族にぶつけてしまう。しかし、それ以上の苦しみと怒りを抱えているのは遺族である。葉山扮する健介がユウに向けてそれまでの感情を爆発させる“怒り”。伏し目から見上げる視線が一直線にユウを捉え、淡々と兄の無念さを訴えかけるその姿に、落涙してしまった人も少なくないはずだ。

 ひとえに“怒っている”演技と言っても様々な演技があると思うが、葉山の“怒り”演技には、見るものを傍観者ではすませない、その場所に連れ去る磁場のようなものがある。大袈裟な身振り手振りをするわけでもなければ、声を荒げるわけでもない。彼は眼でその心理を表現する。もちろん、共演者たちが生み出す空気感や、監督の演出によるものも大きいと思うが、どの作品を見ても、葉山の眼は台詞以上に訴えかけるものがあるのだ。

 現在公開中の『青空エール』では、1年生時から吹奏楽部の選抜メンバーに入るエリートで、3年時には部長を務める水島を演じている。同期の土屋太鳳演じる小野つばさに、足を引っ張るから初心者は辞めてくれないか、と強い言葉を放ち、ここでも強烈な眼力を見せる。水島は、つばさをはじめ、顧問をバカにする教師、まとまらない吹奏楽部の部員、そして自分自身へと“怒り”を向ける。出番は決して多くないながらも、水島の“怒り”が映画の中で、確かな“重し”となり、『青空エール』の物語に奥行きを与えていた。そして、『十字架』同様に、彼の“怒り”はスクリーンを通して観客に突き刺さる力を放っていた。劇中、ほとんど笑顔を見せない水島というキャラクターが、その“怒る”演技の微妙な変化で、確かに人間的に成長していく様子を彼は見事に演じきったのだ。

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(c)2016映画「青空エール」製作委員会(c)河原和音/集英社

 葉山は『青空エール』のインタビューで、「今までの俳優人生を振り返ってみても、すごく大きなものになったと思います。これまでにないってくらい悩んだので、色々得るものも多かったです」(引用:「青空エール」葉山奨之、土屋太鳳&竹内涼真へ抱く想い「出会って変わった」「見習わなくちゃ」 モデルプレスインタビュー)と語り、自分の不甲斐なさに役者をやめようとさえ思ったという。

 朝ドラ『まれ』に続いての共演となった土屋太鳳は「絶対に辞めないで、太鳳はショウノ君のお芝居が好きだし、本当に気持ちでお芝居してる感じは誰にも真似ができない」(引用:葉山奨之インスタグラム)と伝え、その言葉でまた役者を続ける決意ができた、と葉山は自身のインスタグラムで明かしている。

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