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『仰げば尊し』が視聴者の心に響く理由 作曲家・髙見優氏の仕事から考える

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 「音楽とは精神と感覚の世界を結ぶ媒介のようなものである」。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの言葉だ。音楽が人間の精神にもたらす影響は大きい。日常生活の様々な場面で我々は音楽に出会い、意識的にせよ無意識的にせよ、その影響を受けている。

 現在放送中の実話を基にしたドラマ『仰げば尊し』(TBS系)は、弱小高校吹奏楽部を舞台に、元プロのサックス奏者・樋熊迎一(寺尾聰)と生徒たちが、音楽の甲子園と呼ばれる“全国吹奏楽部コンクール”を目指す模様を描いた物語だ。そんな本ドラマが今、感動的な作品だと話題になっている。SNSでは「毎回泣ける」「感動をありがとう」といった声が目立つ。では、なぜ『仰げば尊し』は視聴者が感情移入しやすく、物語が心に響くのだろうか。その理由の1つに、本ドラマのテーマでもある“音楽”があげられる。

 ドラマにおいて、BGMは欠かせない存在だ。物語に輪郭を与え、登場人物の心情や状況をより際立たせる。また、視聴者がテレビを通して得られる情報は、“五感”のうち、基本的には目から入る“視覚”と耳から入る“聴覚”の2つのみだ。だからこそ、視覚情報、聴覚情報をいかに上手く使用するかが、物語に説得力をもたらすうえで重要である。そこで、映像とセリフをより強調させるのが、BGMの役割。シーンごとに適したBGMを用いることにより、視聴者の感情を刺激し、心を動かす。『仰げば尊し』は、このBGMの使い方が非常に巧みなのだ。

 本ドラマは、不良たちやまとまりがなかった吹奏楽部員らが、樋熊迎一の熱意と人間性に惹かれ、次第に心を開き成長していくという王道の青春物語である。樋熊迎一は、生徒たちだけではなくほかの教師たちの心にも影響を与え、変化をもたらしていく。そういった登場人物の感情の変化や情景なども、本作ではBGMを通して、わかりやすく表現されている。

 劇中で使用されている音楽を担当しているのが髙見優氏だ。『14才の母』(2006年、日本テレビ系)や、『フリーター、家を買う。』(2010年、フジテレビ系)、映画『図書館戦争』シリーズなどを手がけた音楽作家である。髙見氏が生み出す音楽は、どれも物語に寄り添っていて、作品の世界観を大切にしている印象を受ける。また、聴く人の心にダイレクトに響き、耳と記憶に残るインプレッシブなものばかりだ。

 髙見氏はほかにも、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(2007年、2011年、フジテレビ)では河野伸氏と、『ROOKIES』(2008年、TBS)では羽毛田丈史氏と共同で音楽を担当。青春ドラマ特有の瑞々しい爽やかさと、熱く切ない模様をBGMで見事に表現している。

 同じく青春ドラマである『仰げば尊し』では、ドラマの題名と同名曲である唱歌が、ピアノバージョン、ロックバージョンなど複数にアレンジされており、劇中で使用されている。細かなアレンジにより一瞬、原曲が同じとは思えないほど雰囲気がガラッと変わっているのだ。ほかにも、物語の展開に沿ったサウンドがドラマの背景に溶けこんでいるため、無意識のうちに感情を揺さぶられ涙腺を刺激されることも少なくない。

 先週(9月4日)に放送された第7話では、音楽留学と吹奏楽部で悩む木藤良蓮(真剣佑)が、青島裕人(村上虹郎)と樋熊奈津紀(多部未華子)に屋上で「樋熊先生の力になりたいから、県大会に一緒に出たい」と話すシーンがあった。そのシーンの序盤は、「忍び寄る影」という曲名からも推測できるように、不安にさせるような怪しい雰囲気のBGMが用いられた。そこから安保圭太(北村匠海)ら3人と有馬渚(石井杏奈)が屋上に駆けつけ「先生に時間がないってどういうこと?」と木藤良蓮らに詰め寄る。樋熊迎一が手術を受けなければ余命半年であることを説明し、木藤良蓮が再度みんなに「もう一度僕に音楽をくれた先生に、お礼がしたいんだ」と訴えかけるも、青島裕人に一蹴される。

      

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