SMAP、ドラマ界における功績 “最後のデビュー記念日”に5人の軌跡を振り返る

 リオ五輪開催中に突然巻き起こった「SMAP解散」報道がようやく落ち着きを見せつつある。ここでは、いまだ寂しさを拭えない多くの人々に向けて、ドラマにおける彼らの功績を検証していきたい。

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(c)タナカケンイチ

 SMAPがデビューした1991年は、『ザ・ベストテン』(TBS系)、『歌のトップテン』(日本テレビ系)、『夜のヒットスタジオSUPER』(フジテレビ系)などの歌番組が終了し、アイドルの活動場所が一気になくなってしまった氷河期だった。だからこそSMAPは、のちの『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)につながる『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)などのバラエティ番組に進出したのだが、一方で俳優業も着々と進めていた。

 1992年の『二十歳の約束』(フジテレビ系)で、稲垣吾郎が主演を務めたのを起点に、それぞれが連ドラの主要キャストに抜擢されていたのだ。なかでも、ドラマ業界に大きな影響をもたらしたのは、「アイドルと同世代俳優の垣根を取り払った」こと。

 木村拓哉が1993年の『あすなろ白書』(フジテレビ系)で石田ひかり、筒井道隆、鈴木杏樹、西島秀俊と共演し、1994年の『若者のすべて』(フジテレビ系)でも萩原聖人、武田真治、鈴木杏樹、深津絵里と共演。中居正広も1995年の『輝く季節の中で』(フジテレビ系)で石田ひかり、保阪尚輝、篠原涼子と共演。香取慎吾も1995年の『未成年』(TBS系)でいしだ壱成、反町隆史、桜井幸子と共演するなど、若者たちの生き方を描く群像劇にキャスティングされた。

 それまでは演技力とファン層が異なるため、「アイドルが出演するドラマ」と「実力派の若手俳優が出演するドラマ」は、すみ分けされていた。しかし、SMAPのメンバーは、「実力派の若手俳優が出演するドラマ」に入り込んで、堂々とした演技を披露。それがきっかけでSMAP以降のアイドルは、実力派の若手俳優たちと共演しやすくなった。

 ただ、それでも「しょせんアイドル」という視聴者の偏見も多く、共演を避けたがる俳優もいたが、潮目を変えたのは、草彅剛主演の『僕』シリーズ(フジテレビ系)。突然余命宣告を受ける高校教師を演じた『僕の生きる道』、娘への愛情に目覚める父親を演じた『僕と彼女と彼女の生きる道』、自閉症だがピュアな青年を演じた『僕の歩く道』で、草彅は“アイドル俳優”という概念を塗り替え、演技派の仲間入りを果たした。

 そんなSMAPメンバーの好演はジャニーズの後輩に道を開いただけでなく、引いては、芸人やバラエティタレントの演技に対する偏見もなくしたのではないか。ヒューマンでも、ミステリーでも、ハードボイルドでも違和感なく演じられるのは、「彼らに力量があるから」にほかならない。

 もう1点、SMAPメンバーのドラマを語る上で欠かせないのが、いわゆる“お仕事ドラマ”。1995年に中居が演じた『味いちもんめ』(テレビ朝日系)を筆頭に、木村は『ビューティフルライフ』(TBS系)で美容師、『HERO』(フジテレビ系)で検事、『GOOD LUCK!!』(TBS系)でパイロット、『プライド』(フジテレビ系)でアイスホッケー選手、『エンジン』(フジテレビ系)でレーサー、稲垣は『ソムリエ』(フジテレビ系)でソムリエ、『ブスの瞳に恋してる』(フジテレビ系)で構成作家、『佐々木夫妻の仁義なき戦い』(TBS系)で弁護士、草彅は『猟奇的な彼女』(TBS系)で海洋生物講師、『冬のサクラ』(TBS系)でガラス職人、香取は『薔薇のない花屋』(フジテレビ系)で花屋、『幸せになろうよ』(フジテレビ系)で結婚相談所のアドバイザー。

驚かされるのは、これらがすべて専門職であること。それまでは一般企業のサラリーマンが主人公のドラマが多かったが、SMAPの活躍とともにお仕事ドラマの幅が広がり、さまざまな職業に脚光が当った功績は大きい。

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