『HiGH&LOW』が創る“ユニバース”の革新性ーー生身の人間による総合エンタテイメントを読む

『HiGH&LOW』ユニバースの革新性

生身の人間から新たな“世界”を創る

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 『HiGH&LOW』は、EXILE HIROがプロデュースし、音楽アルバム『HiGH&LOW ORIGINAL BEST ALBUM』、ドラマ『HiGH&LOW~THE STORY OF S.W.O.R.D.~』、ドラマの続編にあたる映画『HiGH&LOW THE MOVIE』、そしてライブショー『HiGH&LOW THE LIVE』(以下、『LIVE』)など、多様な作品が同一の世界観を共有しながら展開する一大プロジェクトである。全体を貫く物語は、架空の地域SWORD地区を舞台に、山王連合会、White Rascals、鬼邪高校(おやこうこう)、RUDE BOYS、達磨一家ら5つのチームと、かつて地区をまとめていたバイカ―集団MUGENの元リーダー・琥珀がある理由から激しい戦いを繰り広げる集団抗争劇である。ここに、喧嘩最強の雨宮兄弟、SWORD支配を狙う九龍グループ、音楽とダンスの理想郷を作るために琥珀に力を貸すMIGHTY WARRIORS、琥珀を陰で操る海外マフィア李、抗争を見守る(?)苺美瑠狂(いちごみるく)などいくつもの勢力が絡んでくる。

 筆者はもともと、メインキャストであるEXILE TRIBE(EXILE、三代目 J Soul BrothersらEXILE系アーティストの総称)ファンというわけではなく、『るろうに剣心』に参加した大内貴仁氏のアクション演出と、窪田正孝・林遣都・山田裕貴の出演につられて観はじめたクチである。ところが、ドラマからすべてを鑑賞した今ではその魅力にとりつかれ、アルバムをヘビーローテーションで聴きまくり、劇中のセリフを脳内で反復する、まさに『HiGH&LOW』中毒の日々を送ることになってしまった。同様にEXILE TRIBEに縁がなかった映画ファンや俳優ファン、そのいずれでもない属性の人間で、『HiGH&LOW』の虜になる人も増えてきているようだ。なぜ、『HiGH&LOW』はジャンルを越えて新たなファンを獲得しはじめたのか。ここでは、プロジェクトの集大成である『HiGH&LOW THE LIVE』を入口に、『HiGH&LOW』全体の魅力について考えていく。

『HiGH&LOW THE LIVE』で明らかになる全貌

 端的にあらわすならば、『LIVE』はドラマ・映画・音楽アルバムの世界を文字通りライブで再現したものだ。そして、『HiGH&LOW』の演者たちが物語から抜け出し、本来のパフォーマーとしてもライブを繰り広げる……つまり架空の世界と現実をつなげるエンタテインメントショーなのである。ドラマ・映画で登場する『マッドマックス』的な驚くべきアクションシーンも表現するし、映画の冒頭を思わせる爆発、肉弾バトルや剣戟、そしてコミカルな寸劇すら再現するのである。もちろん、「一方その頃湾岸地区ではMIGHTY WARRIORSが……」でおなじみの‟あの声”も大活躍。そして、各チームのテーマソングをEXILE TRIBEの各ユニットがパフォーマンスすることで、映画・ドラマの物語を目の前で紡ぐのである。さらに言うならば、ドラマ・映画版では見られなかった、「あの人があのチームにいたら?」といった「もしも」シチュエーションや、いままでフィーチャーされなかったキャラクターの活躍など、公式の二次創作的な展開まで用意されている点にも触れておきたい。このあたりは、公式サイトで明かされている出演者を見れば少しは予想できるはずだ。ただ、そのイメージを軽く上回ってくるのが、『HiGH&LOW』の恐ろしいところなのだが。

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 筆者はドラマ→映画と物語の順を追って楽しんできたので、『LIVE』に登場するアーティストたちをすべて劇中キャラとして(例えばAKIRA=琥珀さん)認識していた。だからこそ、ある段階でアーティストたちがキャラの殻を破って見せるパフォーマンスはとても新鮮。EXILE TRIBEの面々が「EXILE」という1つのイメージではなく、各々に豊かな才能と魅力を持っていることを知ることになり、心底驚かされたのである。映画・ドラマの世界が現実のEXILE TRIBEのエンタテインメントと結びつく。それが『LIVE』の正体である。

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