>  > ジェームズ・ワンの新たな恐怖表現に迫る

ホラー映画の新たな恐怖表現が誕生 『ライト/オフ』は暗闇への怖れを逆手に取る

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20160823-LIGHTOFF-poster-th.jpg『ライト/オフ』ポスタービジュアル

 明かりを付けると“それ”は消え、明かりを消すと“それ”は目の前に現れる。これまでに製作されたホラー映画群とは一線を画す、人間の深層心理に潜む“暗闇に対する恐怖”を逆手に取った、新たな恐怖表現を盛り込んだホラー映画が誕生した。

 デビュー作『SAW』シリーズや、『インシディアス』シリーズ、そして『死霊館』シリーズを手がけ、今やホラー映画界の巨匠となりつつあるジェームズ・ワンが、インターネット上で話題になっていたホラー短編を多数手がけていたスウェーデン出身の無名の作家デヴィッド・F・サンドバーグを発掘。シンプルな上、わずか2分半という短い尺の中で、世界中の視聴者をパソコンデスクから飛び上がらせた同名(原題)のホラー短編作品『Light out』を、ワンが自らプロデュースし一本の長編作品へと発展させた。

 もとになった短編バージョンで、その正体に関しては謎のままになっていたスイッチのオン/オフの合間に潜む“何か”。本作では、それを主人公の家族に纏わる因縁の一種として具体化し、ホラー映画史に新たな足跡を残すモンスター“ダイアナ”というキャラクターを誕生させた。テリーサ・パーマー扮するヒロイン・レベッカの家族に纏わりつく忌まわしい存在として、ダイアナは容赦なく闇の中に現れては、一家を恐怖のどん底に突き落とそうとする。

 ストーリーの主軸はダイアナとレベッカの闘いになっているが、その根底にあるものは“贖罪”だ。ダイアナにとり憑かれ、精神状態の危うい母親と、その母を救おうと健気に奮闘する幼い弟、そしてそんな弟と母を見捨てて家を出たヒロイン。登場人物の誰しもが心の底に秘めている“贖罪”というテーマが、本作を単なるこけおどしのホラー映画で終わらせない。脚本を手がけたのは、これまでリメイク版『エルム街の悪夢』や、『ファイナル・デッドブリッジ』といったホラー映画畑で活躍してきたエリック・ハイセラー。ブラックライトやネオンサインの明滅を上手く利用し、闇に潜むダイアナの姿を徐々に具体的に視覚化していく表現方法は、観ている観客を不安にさせる。さらには、一家とダイアナにまつわる秘密という謎解き要素も加えた秀逸な脚本に仕上げている。

 ホラー映画で重要な要素の一つが“音響効果”だ。ジェームズ・ワン監督が関わったホラー映画は、“音”の使い方が上手い(おそらくワン作品で長年サウンドデザインを手掛けているジョー・ズーバンの手柄でもあるのだが)。たとえば『インシディアス』では冒頭からフルボリュームで音楽というよりも悲鳴に近い曲をかきならし、観客を不安にさせる。そして何が起るかわからない不安感を抱いたまま、映画に集中していると、いきなり大音響とともに暗闇からモンスターが現れる。この緊張感が、ビクビクしながら観ている観客を必要以上に驚かせる。

 また『死霊館』では、悪霊が部屋の片隅に現れる際、地震かと思うほど凄まじい重低音を場内に響かせ、70年代に短命に終わったサウンドシステム“センサラウンド”を彷彿させる迫力を醸し出すことに成功している。因みに、あまり音響効果の良くない映画館や、自宅のテレビで『インシディアス』を観ると、さほど驚かないまま映画が終わってしまう(ぜひ一度ジェームズ・ワン爆音映画祭を開催してほしい)。残念な結果を迎えないように、ホラー映画を観る際は音響効果の高い映画館を選ぶのが重要だ。

      

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