東山紀之、突然のキャラ変更で新境地 『刑事7人』は『相棒』に並ぶ人気作となるか?

 今クールで、視聴率・内容ともに意外な健闘をみせているのが、テレビ朝日水曜21時放送の東山紀之主演『刑事7人』第2シリーズだ。『相棒』の人気ドラマ枠で、新たな刑事物として期待された第1シリーズが微妙な結果に終わっただけに、様々な改変がなされ話題を呼んでいる今シリーズ。その改変はどのようなものだったのか、そして今後『相棒』に並ぶ人気シリーズとなるための鍵は一体なにかを検証してみたい。

シリアス&ハードに路線変更した『刑事7人』

 まず、第2シリーズを見て多くの視聴者が思ったのは、ドラマの雰囲気がフワッとしていたものから、シリアス&ハード路線にガラッと変わったことだろう。例えるなら、ユーモアのあるティム・バートンの『バットマン』が、重厚な作風のクリストファー・ノーラン『ダークナイト』になったぐらいの変化で、もはや続編と言うよりリブートに近く、登場人物のキャラも大幅に変更されている。

 特にファンの間で大きな物議を醸したのは、東山演じる主人公・天樹悠の豹変ぶり。もともと天樹という人物は、かつて妻子を殺されたつらい過去を背負っているが、その暗さを微塵とも感じさせないほど明るく、おしゃべりで、人情味のある刑事だったのに対し、2では全く笑わず、ロボットのように黙々と理詰めで事件の真相に迫っていく“必殺仕事人”のような刑事となっている。1と2の間でなにか天樹を豹変させるような出来事があった様子もなく、唐突にキャラ変をしている。

 天樹だけでなく、天樹と対照的な熱血漢な刑事を務めた髙嶋政宏演じる沙村康介が係長になったことで、感情を抑え大人の落ち着きがあるリーダーになっており、12係の紅一点である倉科カナ演じる水田環は、1ではかなり鬱陶しいキャラだったのが、こちらも落ちついたできる女風の刑事になっていて、1で一番の売りであった個性派集団という要素を薄め、遊びのない完全なるエリート戦闘集団となっているのが1との大きな違いである。

 それだけに、事件もかなり猟奇的でハードな内容になっていて、初回は些細な理由で警察に恨みを持った犯人がバラバラ遺体を各所にばら撒きゲームとして警察を挑発、懸命の捜査で解決したかと思いきや、真犯人が警察内の上層部にいるという、他のドラマでは最終回でもおかしくない展開であったり、拉致軟禁された男の心臓のペースメーカーに爆弾の起爆停止装置があり、爆弾を止めたければペースメーカーを止めなければいけなく、その姿をネットで中継をするという、映画『SAW』のように警察が誰の死を選ぶかを試される展開など、ストーリーもかなり映画的で凝っている。

 今シーズンのドラマでは猟奇的な刑事物は波瑠主演の『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』が話題だが、『刑事7人』もかなりの異常ぶり。しかも動機がどれも些細なのがリアルである。

 この路線変更に関して、東山には「世間ではとても悲しくひどい事件が多発している中で、事件に対してより高いプロ意識を持って生きる男たちを描きたい」という思いがあり、「より精度の高い成熟した大人の作品にしなければ」とスタッフと綿密な打ち合わせをした結果、ストイックな東山の真の個性が色濃く出たキャラクターとなったようだ。この路線変更によって作品のカラーが明確になったことで、かえってドラマが見やすくなり、多くの視聴者には好評で視聴率も健闘している。この枠は『警視庁捜査一課9係』や『TEAM -警視庁特別犯罪捜査本部-』など、チームで動く刑事もののライバル作品が多いがゆえに、シリアス路線は差別化を図るためにも必要不可欠だったといえる。

 ただ、第1シリーズから見ている者にとっては、やはりその変化に理由があってほしいところ。第五話では、中盤で12係の仲間である鈴木浩介演じる永沢圭太が謎の死を遂げ、相当な怒りを持ってチームが事件を究明していたが、これを第2シリーズの初回に持ってきて、シリーズ通してのサブストーリーにし、最終回に謎が解ける展開に持って行けば、シリアス路線に変更された理由付けになったのではないかと思ったりもする。しかし、当初のコンセプトである、誰でも主役ができるキャスティングの中で、唯一バイプレーヤーとして物語の中和剤となっていた鈴木浩介が退場となると、今後さらに箸休めがなくなり、よりシリアスに進んで行くのがちょっと心配でもある。未来犯罪予測センターという謎の部署に異動となった片岡愛之助演じる山下巧や、北大路欣也演じる法医学教授の堂本俊太郎の個性的な2人の出番が減っているのも気になるところだ。

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