水沼史郎 ≒ 風間俊介こそ最強の“メガネ男子”だ! 今夜放送『コクリコ坂から』の完璧なキャラ作り

 一方で、長澤まさみが声優を務めた主人公・メル、岡田准一が演じた風間俊も、多くの人が憧れを抱くキャラクターだ。炊事洗濯など家事全般をこなし、弟の靴下に穴が空いていれば裁縫をし、誰かが困っていれば自ら進んで助けを申し出る“イマドキ”ではない女の子。対する俊も学園のヒーローとして、同性からも異性からも慕われるカリスマ性の持ち主。しかし、そんな主役の二人に負けないくらい強い印象を残すのが、水沼というキャラクターのすごさである。彼の最後の台詞、「閣下、あの二人に人生上の重大事が発生しました。二人は駆け付けねばなりません」と、文字に表すと非常に浮いているようにも見えるが、本作では最も印象に残る台詞のひとつとなっている。風間の低音でありながらも、伸びやかさのあるその声が、走りだすメルと俊を後押ししているように感じるのだ。
 
 本作の舞台となった1963年は、東京オリンピックの前年。そして本作の企画・脚本を手がけた宮崎駿が、東映動画に入社した年でもある。劇中で描かれる、希望に溢れるまっすぐな若者たちの姿は、当時の日本国民が抱いていた未来像や、宮崎駿自身の回想が投影されているのだろう。カルチェラタンの取り壊しを救う徳丸理事長のモデルが、スタジオジブリ設立の大スポンサーである徳間康快であることが明らかにされていることからも、宮崎駿のノスタルジーが随所に織り込まれている作品と言えそうだ。風間俊と水沼史郎のコンビも、東映入社後コンビを組むことになった高畑勲と自身をモデルにしているのかもしれない。

(文=石井達也)

■放送情報
金曜ロードSHOW!『コクリコ坂から』
日本テレビ系列にて21:00〜22:54放送
公式サイト:https://kinro.jointv.jp/lineup/160812/

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