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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』興行との対比から考える、『シン・ゴジラ』大ヒットの真価

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 先週金曜日に公開された『シン・ゴジラ』が、公開3週目の『ファインディング・ドリー』、公開2週目の『ONE PIECE FILM GOLD』といった強敵を抑えて、動員でも興収でも初登場1位を奪取。先週末土日2日間の動員は41万2302人、興収は6億2461万700円。初日を含む3日間の成績は動員56万4,332人、興収8億4,567万5,500円。事前の予測を上回る大ヒットである。

 もっとも、「事前の予測」というのはあくまでも2016年におけるゴジラ・ブランドの潜在力、そして全国441スクリーンという(対『ファインディング・ドリー』、対『ONE PIECE FILM GOLD』という視点からは)超拡大ロードショーというわけではない公開規模からの予測である。なにしろ、事前に一般試写はもちろんマスコミ試写もほとんど行われていなかったために、フタを開けてみるまではどう転ぶか誰にもわからない作品だったのだ。そして、いざフタを開けてみると、SNSを中心とする大反響が示している通り、本作は「監督」(及び特技監督)の樋口真嗣の作品としてではなく、「総監督」(及び脚本、編集)の庵野秀明の新作として多くの人から受け止められている。より公正を期すために補足するなら、自らが「盟友」と呼ぶ樋口真嗣演出の長所も短所も知り尽くした庵野秀明が、脚本と編集によってストーリーテリングの手法とリズムを完全にコントロールした作品、と言ったほうがいいだろう。

 したがって、本稿では他の多くのネット・メディアが景気のいいニュースとして既に報じている、ゴジラ国内作品の前作にあたる『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)との比較(初動興収比328.7%)や、ハリウッド版『GODZILLA』(2014年)との比較(初動興収比122.8%)ではなく、過去の庵野秀明作品と比較することで、本作『シン・ゴジラ』の興行の現状と今後の目標値を推し量ってみたい。

 この10年間の庵野秀明の代表作と言えば、もちろん『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズである。2007年の『序』が20.0億円、2009年の『破』が40.0億円、2012年の『Q』が52.6億円と、右肩上がりに累計興収の記録を更新し続けてきたこのシリーズが真に画期的であったのは、それが代表取締役社長庵野秀明の株式会社カラー、1社単独の製作作品であり、配給や宣伝もほとんどインディペンデントに近い体制によっておこなわれた作品であったことだ。それゆえに、累計興収20.0億の『序』は85館、累計興収52.6億を記録した『Q』でさえも223館からスタートという小〜中規模での公開。それで50億超えというのは、まさに前代未聞、映画興行における革命と呼べるほどの事件だった。

 きっと、東宝は大ヒットが確実だった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(及び、それに続くシリーズ完結作)の配給に何らかのかたちでコミットをしたかったに違いない。それを踏まえると、今回の「東宝がゴジラを庵野秀明に一任した」という出来事は東宝側の大英断であったように語られがちだが、むしろ「東宝が必死に庵野秀明を口説き落とした」というのがより実態に近かったのであろうことがわかる(そのことは、製作発表時の庵野秀明のコメントからも伝わってくる【参考:『シン・ゴジラ』公式サイト】)。実際、東宝と庵野秀明との蜜月は2010年代に入ったばかりの頃から始まっていて、庵野秀明がプロデュースを買って出た、およそ東宝らしからぬハードな内容の平野勝之監督『監督失格』(2011年)の東宝映像事業部による配給実現や、きっかけは宮崎駿監督からの指名であったとはいえ、いきなり主役で声優デビューをはたした『風立ちぬ』(2013年)も、今になってみれば今回の伏線であったと思えるのだ。

      

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