『ONE PIECE FILM GOLD』は現代版の任侠映画!? 尾田栄一郎がモチーフとした作品を探る

尾田栄一郎と東映任侠映画の関係性

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 熱狂的な読者を感動させ続けている『ONE PIECE』だが、コアな映画ファンからしてみると、少々歯がゆい点もある。原作者の尾田栄一郎が如何に数多くの映画を観ているかということが、数多く登場してきた脇役のキャラクターから推測できてしまうのが原因の一旦だ。中でも元ネタのファンを驚愕させたのは、『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクフルター博士をモチーフにしたとされる、エンポリオ・イワンコフ。それを知らない若い読者には奇抜なキャラクターとして受け入れられるであろうが、全世界に熱狂的なファンがいる『ロッキー・ホラー・ショー』のキャラクターをそのままパロディ化するとは恐れ入った。

 『ONE PIECE FILM GOLD』でも“走れメロス”そのままのエピソードや、ジョージ・ロイ・ヒル監督の名作『スティング』を彷彿させるトリッキーな展開が見受けられる。それはそれで元ネタに対するリスペクトが充分に感じられるので、嫌悪感を抱くことはないが、安易に感じる面もある。こうしたネガティブな発想を抱いてしまうのは、コアな映画ファンゆえの宿命だが、考え方を変えてみると、尾田栄一郎がオリジナルを知らない若い世代に、それを伝授していこうとしているのではないかと考えることも出来る。

 究極の自己犠牲は『ONE PIECE』にも幾度となく登場してくるエピソードだが、例えば山下耕作監督の名作『関の弥太っぺ』を観てみたらどうだろうか? 誰もが泣かされた、ナミやチョッパーのエピソードを超越する号泣モノの展開がそこに待ち受けているのだが……。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『ONE PIECE FILM GOLD』
公開中
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎(集英社 週刊「少年ジャンプ」連載)
監督:宮元宏彰
脚本:黒岩勉
音楽:林ゆうき
劇中曲:小島麻由美
キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将
美術監督:小倉一男
美術設定:須江信人
色彩設計:永井留美子
CGディレクター:能沢諭
撮影監督:和田尚之
製作担当:稲垣哲雄
出演:田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー、山路和弘
ゲスト声優:満島ひかり、濱田岳、菜々緒、ケンドーコバヤシ、北大路欣也
主題歌:「怒りをくれよ」GLIM SPANKY(ユニバーサル ミュージック)
(c)尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会
公式サイト:www.onepiece-film2016.com

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