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良い子には見せられない“凶悪サンタ”映画の系譜ーー森直人が『サイレント・ナイト』をレコメンド

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「良い子にはプレゼントを、悪い子には死を」

 ――という極端な意見(キャッチコピー)を添えて、凶器を持った陰気な顔のサンタさんの姿がジャケに映っているDVD。これは数多いスラッシャー・ホラーの中でも筆者がニコニコ笑顔で推薦したい一本、1984年のアメリカ映画『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧』(監督:チャールズ・E・セリアー・Jr)である。うちの4歳の息子が目にしてトラウマになったら困るのでパッケージは仕事部屋に隠しているのだが、実際リアルタイムの公開時には、邪悪なコンセプト、そしてサンタのコスプレで連続猟奇殺人を犯す青年のお話が当然にも物議を醸し出しまくったらしい。「子供の夢を壊さないでください!」ってことで、各国で上映禁止やバッシング騒動が巻き起こった伝説の超問題作なのだ。

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 にもかかわらず、結局シリーズが続々作られ(第5作まで日本でもすべてDVD発売)、フランスでも『ウォンテッド Mr.クリスマス』(89年/監督:ルネ・マンゾール)などフォロワー的作品が生まれた。『スクリーム』や『ソウ』といった人気シリーズにも影響を与えており、「結局みんな好きなんじゃん!」と肩を組みたくなるほど、低予算ながら冴えたアイデアとフリーキーな演出が横溢した快作なのである。

 ちなみに『サンタが殺しにやってくる』(81年/監督:ルイス・ジャクソン)という同系の先行作もあるのだが、こちらは微妙にヌルい内容。おそらくコレを観て苛立った監督が、「もっと思いっきりやれよ!」とアクセルを踏みきったのが『悪魔のサンタクロース』ではないかと筆者は勝手に確信している。

 さて、2012年にまた新しい『悪魔のサンタクロース』が作られた――というニュースはかねてからキャッチしていたのだが、その『サイレント・ナイト 悪魔のサンタクロース』(監督:スティーヴン・C・ミラー)が、新宿シネマカリテで開催中の企画「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」内でついに日本上陸(劇場公開)の運びとなった(8月5日、15日、17日の三回上映)。

 リメイクという触れ込みだが、現物を観るとストーリーがオリジナルとはまったく異なるので“シリーズ最新作(第6作)”という印象。しかもこのシリーズは途中でサンタとかクリスマスに関係ないところを彷徨っていたので(その一本、89年の第3作『ヘルブレイン/血塗られた頭脳』の監督は、ニューシネマの極北的傑作『断絶』(71年)などで知られる鬼才モンテ・ヘルマンだ!)、今回はリブート的な原点回帰といったところか。聖なる夜を血に染める恐怖で、クソ暑い真夏の日本を狂い咲き感覚で襲ってくれる。

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 物語の舞台はウィスコンシン州の田舎町。主人公は保安官の女性オーブリー(ジェイミー・キング)だ。クリスマス・イブの日、サンタクロースの格好をした異常者による殺人事件が発生。時期的にサンタのバイトを務める連中がウォーリー状態で町を埋める中、真犯人のサンタは誰だ?と、オーブリーが必死の捜索を展開するミステリー仕立ての作劇だ。また「イカれた野郎はこの俺が町から叩き出してやる!」と豪語するやや過剰にマッチョなオーブリーの上司を、あの『時計じかけのオレンジ』(71年/監督:スタンリー・キューブリック)の主演で永遠のカルト・レジェンドとなったベテラン怪優、マルコム・マクダウェルが快調に演じている。

 内容的には、薄汚れたビジネスサンタがあふれ、子供たちはプレゼントが欲しいだけ、大人たちは金儲けや色事のイベント……というクリスマスの夢も情緒も本来の聖性もなくなった現代社会への風刺が匂わなくもない。そんな中、オリジナルへのオマージュがしっかり刻まれているのが嬉しい。

 例えば第一作の冒頭で、孫の少年に「いいか、クリスマスは一年で一番怖い夜だぞ。サンタに会ったら死ぬ気で逃げるんだ!」と強烈なメッセージを教え込む、精神を病んだおじいちゃん。この重要なキャラクターに相当する人物&シーンも登場する。

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 そしてトナカイの剥製のツノに、捕えた女性の背中をぶっ刺して吊るす残虐シーンも再登場。これ自体、女性を精肉用のフックに吊るす『悪魔のいけにえ』(74年/監督:トビー・フーパー)の応用ではあるのだが。ちなみに第一作の剥製は鹿のようにも見えるのだが、もしかして当時はトナカイが見つからず(あるいは買えず)鹿で代用したのではないか、と筆者は踏んでいる。

 さらにベーシックな世界観もオリジナルをちゃんと受け継いでおり、サンタの標的になる「悪い子」の主な罪は性行為。要はセックスを楽しむ大人、が殺害の対象のメインになるのである。非リア充のヤツアタリみたいなノリにも思えるが、その「処刑」はオリジナルより遥かにエゲツない。例えば中盤、女性の切断された足首が空高くポ~ンと飛び、そのあとサンタが裸の彼女をそのまま“ある機械”の中に押し込んでいく。

「ひい~、やめて! 助けて! お願い! ギャアアアアアアアアァ~!!!」

 ……このへん、本気で「良い子」には絶対見せられません!

      

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