島崎遥香は霊にも“塩対応”だった? 『ホーンテッド・キャンパス』で見せた無色透明の演技

 現在公開中の映画『ホーンテッド・キャンパス』。第19回日本ホラー小説大賞の読者賞を受賞した小説を原作とした青春映画だ。幽霊が見えることに悩む主人公の八神は、一浪して入った大学で、高校時代に片思いをしていた後輩・こよみと再会。彼女と一緒にいるために、オカルト研究会に入った彼はそこで次々と怪奇現象と対峙していく物語だ。

 劇中にはふたつの恐怖エピソードが登場し、骨董品マニアの学生が引越しのたびに部屋の壁に女性の顔のシミができることを相談する前半と、大学内で自殺した女子高生の霊を呼び出そうとする後半に大きく分けることができる。中山優馬演じる主人公の八神と、オカルト研究会のメンバーで大野拓朗演じる黒沼だけが霊が見えるという設定のため、基本的なホラー映画の、「恐怖体験をしている人物から恐怖を得る」という仕組みと正反対のアプローチをしているのが面白い。

 登場人物のほとんどが霊の存在に気が付いていないけれど、霊が見える主人公の主観が中心となっているので、観客にも霊が見えるという仕組みなわけだ。よって、霊が見えない他の登場人物たちが繰り出す、軽いタッチの青春ドラマが、とてつもなく不気味なホラー描写を引き立てるのだ。これはなかなか珍しいタイプのホラー映画なのではないだろうか。

 そう考えると、昨年の秋に公開された映画『劇場霊』で球体関節人形に追いかけ回される主人公を演じ、すっかりホラー女優として開眼したばかりの島崎遥香が活きないと思ってしまうが、決してそんなことはない。恐怖に怯える姿こそないものの、彼女が演じるヒロイン・こよみは、「無色透明」な性格であるがゆえに、霊が憑依しやすいという設定で、何度も危険に晒されるのである。

 そんな島崎遥香の「無色透明」な演技は、一見すると彼女の十八番である“塩対応”を思い起こさせるほどに、抑揚がない。それでも、表情に感情が現れなくとも、行動で中山優馬演じる八神への想いを観客に認識させるのだから、決してまずい芝居というわけではない。それどころか、空回り気味な主人公と、クールで物静かなヒロインとのコントラストもまた、作品の中心にある青春ドラマにユーモアを与えてくれるのである。

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