ドラマ『火花』インタビュー:林遣都 × 波岡一喜が語る、表現を仕事にする苦楽

林遣都 × 波岡一喜『火花』インタビュー

波岡「僕らは全編を通して自分の役柄のまま」

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ーー東京のひとつひとつの街も丁寧に映し出されていて、自分たちが住んでいる街はこんなにも魅力的なのかと気づかされる作品でもありました。

波岡:渋谷、池尻、三宿、下北沢、246沿い、高円寺、吉祥寺、上石神井の家までの道のり、高田馬場、そして芸人として売れたら六本木。こんなにガチで撮っている作品、まずないですよ。

ーー人の多い東京で、どうやってあの画を撮ったのでしょう?

波岡:大事なのは、一般の方にご協力いただけたというとことですね。

林:本当に、それしかないですね。制作の人たちはすごかったです。毎回、街中での撮影のたびに頑張って人を止めて、よりリアルな東京を切り取ろうと奮闘していました。

波岡:吉祥寺では、駅前通りのど真ん中での撮影が多かったのですが、金曜日とか土曜日の夜中とかで、もちろん終電を終えてから撮影を始めるわけですけれど、人はいっぱいいるんですよ。でも、映像では誰もいないじゃないですか。特に徳永が手前に歩いてきて、俺が奥に歩いていくシーン、ずっとバスの上から撮っているんですけれど、脇の道は制作スタッフが総勢20人くらいで、カットがかかるまで全部待っていただいているんです。しかも長回しだから3~5分とか。すごかったな。そういう大掛かりな撮影が日常的にあった。

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ーー演じていて特に印象的だったシーンは?

林:いっぱいあるけれど、強いてあげるなら最後のほうかな。特に最後の居酒屋のシーン。

波岡:ああ、あの居酒屋は強烈やな。ふたりでボロ泣きしながら、神谷が徳永から“おっぱい”で説教くらうところ。あそこ強烈やな。

林:あとは神谷の新しい彼女と鍋を食べるシーンも。後半では、本当に徳永と神谷として関係性ができあがっていたから、波岡さんの顔を見ているだけで泣けてくるんですよ。あんなに好きで憧れていた人が、なんでこんなにボロボロになってるんだっていう。台本で読んだときは、号泣するシーンが立て続けにあったから、やり切れるのかなって不安だったけれど。特におっぱいのシーンは自信なかった。

波岡:なにせ怒る対象がおっぱいやからな。

林:一歩間違えたら笑ってしまいそうな状況で、重く張り詰めた空気にできるか不安だったけれど、現場に入ってしまったらふたりで積み重ねてきたものがあったから、なんの違和感も感じずに演じることができた。あのシーンは見ている側からすると笑えるところもあって、原作で目指していた世界がちゃんと再現できたんじゃないかって思います。実際、あのシーンが強烈だったと言ってくれる方も多いですね。

波岡:後半もすごい覚えているけれど、初日も覚えていますね。徳永が漫才やって滑って、仇とったるわって俺らも漫才やって。ふたりでじっくり絡んでいるわけじゃないんですけれど、運命的な出会いのシーン。初日やったんで、現場は張り詰めていたし、おたがい緊張もしていたし、これからどうやって進んでいくんやろうって探っていたし。でも、ついに走り出したっていう。ドラマの中では夏の設定だけど、本当は極寒だったこともあって、すごい覚えていますね。

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ーー今回は毎話ごとに違う監督が撮っていて、日本のドラマとしては珍しい制作体制になっています。その辺りは、演じていてどう感じましたか?

林:最初は戸惑うかなって思ったんですけれど、総監督の廣木監督が『火花』をどう撮っていくかについて、しっかりベースを作ってくれました。4ヶ月の撮影期間を、まるで10年生きているように演じてほしいという意思が、現場にいるすべてのスタッフの間でも統一されていた。自由に動いてくれっていう環境ができあがっていて、それは監督たちも尊重してくださいました。細かな指示もなく、役を信じてくれたというか。できあがった映像を観たときに初めて、それぞれの監督が僕らのいろんな部分を引き出してくださっていたんだなって気づきました。こんなことをやっていたんだって。

波岡:まったく遣都のいう通りで、僕らは全編を通して自分の役柄のままで居続ければよかったんです。廣木監督はもちろん、ほかの監督も「さあ、徳永と神谷をやってみてください」という感じで、「それ面白いね、そうくるならこうやって撮ってみようか」ってだけです。だから、監督が変わったことで僕らが不便を感じたことはないですね。ただ、いろんな監督と一緒に仕事をさせてもらえたのは、本当にラッキーだったと思います。出会いという意味でも面白かったし、良い意味で、最後まで全く飽きることのない現場でした。

(取材・文=松田広宣)

■配信情報
NETFLIXオリジナルドラマ『火花』
配信中
出演:林遣都、波岡一喜、門脇麦、好井まさお(井下好井)、村田秀亮(とろサーモン)、菜葉菜、山本彩(NMB48/AKB48)、徳永えり、渡辺大知、高橋メアリージュン、渡辺哲、忍成修吾、徳井優、温水洋一、嶋田久作、大久保たもつ(ザ☆忍者)、橋本稜&俵山峻(スクールゾーン)、西村真二&きょん(ラフレクラン)、染谷将太、田口トモロヲ、小林薫
総監督:廣木隆一
監督:白石和彌、沖田修一、久万真路、毛利安孝
原作:又吉直樹著「火花」(文藝春秋 刊)
脚本:加藤正人、高橋美幸、加藤結子
制作プロダクション:ザフール パイプライン
制作:吉本興業
製作:YDクリエイション
(c)2016YDクリエイション
公式サイト:https://www.netflix.com/jp/title/80095626

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