堅実な『99.9%』と自由な『ラヴソング』ーー“視聴率のジレンマ”に揺れた春ドラマを総括

 話を戻すと、堅実な作品は、「気軽に見られる」「テンポとあと味がいい」というメリットがある反面、「深みがなく物足りない」「予定調和で結末が分かる」というデメリットがある。一方、自由な作品は、「深みがあり、満足感が高い」「先が読めずハラハラドキドキできる」というメリットがある反面、「集中して見なければいけない」「内容がつかめず取り残されやすい」というデメリットがある。

 つまり、デメリットとメリットが表裏一体ということだが、願わくば「堅実か、自由か」のどちらかに振り切るのではなく、両者をいいところ取りをするような作品が見たい。その点で『重版出来!』と『グッドパートナー 無敵の弁護士』(テレビ朝日系)は、堅実な中に自由を織り交ぜた質の高い作品だった。視聴率こそ伸びなかったが、クチコミサイトやSNSの動きを見る限り、視聴満足の高い作品だったのは間違いない。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間約20本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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