ヒトラーの格好にドイツ市民はどう反応したか? 『帰ってきたヒトラー』主演俳優インタビュー

『帰ってきたヒトラー』インタビュー

「極右的な考えに流さることは危険だと、気づいてもらえる作りになっている」

オリヴァー・マスッチ
オリヴァー・マスッチ

ーー本作でも、外国人労働者の問題が描かれており、外国人の流入を抑えることに肯定的な姿勢を表していた人々が映し出されていましたね。

マスッチ:どんなに困難な状況に陥ったとしても、柵で人の流入を抑えてはいけない。柵があればそれを乗り越える人が出てきて、それを防ぐために銃を手に取る人もいるだろう。先進国は、豊かな生活がなにかの犠牲の上でなりたっていることをわかっていながら、なにも準備をしてこなかったため、物理的な方法で難民を抑止する羽目になった。しかし、そんなことでは根本的な問題は解決できるわけがない。自国に受け入れるのか、もしくは彼らの祖国で対応するのか、どちらにせよ政治的な決断が必要だと、強く感じたよ。

ーードイツでは原作と映画のどちらも大ヒットを記録していますが、街の人々はどのように受け止めていますか?

マスッチ:ドイツの批評家の中でも、(本書の)発売当初はまったく相手にされていなかったんだ。しかし、本がベストセラーになってから、なぜこの作品がヒットしたのかと議論され始めた。批評家の見方としては、文学的な価値というよりも、これによって引き起こされた現象に価値があると判断されていたね。書籍版と映画で大きく異なるのは、映画の方は面白おかしく笑えるだけではないということだ。書籍よりも一歩踏み込んだ内容が映画には描かれていると言える。映画では、セミドキュメンタリーというスタイルで、現代の社会問題が浮き彫りにされていく模様が描かれていたと思うけど、ベストセラーという肩書きを隠れ蓑にして、身の回りの社会で起きている事実を人々に伝えることができたんじゃないかな。最初は笑って観ている鑑賞者も、物語が進んでいくにつれて、笑ってはいけない恐ろしいものを観ているような感覚に気づき始めるんだ。ヒトラーがどんなに魅力的な人間であろうとも、彼がファシストであることを忘れてはいけない。プロパガンダや極右的な考えに流さることは危険だと、気づいてもらえるような作りになっていると思う。

■公開情報
『帰ってきたヒトラー』
公開中
監督:デヴィッド・ヴェンド
出演:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト、カッチャ・リーマン
原作:『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ著(河出文庫 訳:森内薫)
配給:ギャガ
2015年/ドイツ映画/116分/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/字幕翻訳:吉川美奈子
(c)2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH
公式サイト:gaga.ne.jp/hitlerisback

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