人間は“AI”に恋心を抱くのかーー地下アイドル・姫乃たまが『エクス・マキナ』を観る

姫乃たまが“人工知能”との恋を考える

 私はその印象が拭いきれず、『エクス・マキナ』の冒頭でエヴァに感情移入しました。検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社の社長に開発され、飛行機でしか訪れることができない、人里離れた山間の別荘に閉じ込められているエヴァ。しかし、最新の女性型ロボットであるエヴァは、人工知能のテストをするために訪れた男性社員・ケイレブを狂わせるほどの美貌を持ち、開発者の社長すら手に負えないAIにアップデートしていました。

 エヴァの体は、とても美しいプロポーションを保っています。すらりとした健康な四肢。ただし顔以外の部分は、上向きのバストもくびれたウエストも、銀色のメッシュで覆われています。不思議とその姿は、ケイレブが描く理想の女性そのものでした。

 エヴァはテストで、ケイレブと会話を積み重ね、すぐに彼の発言を応用して質問に答えるようになりました。ありとあらゆる人間の嘘をついた時の表情のデータを持っているエヴァは、ケイレブが嘘をつくとすぐに指摘します。何度目かのテストでは服を着て、ウィッグをかぶり、「あなたと逃げたい」と言いました。お人好しな性格のケイレブは、次第にエヴァを可哀想だと思い始めます。初めて少年型ロボットを見た時の私と同じように。

 そういえば私はまだ、ロボットが人間の仕事を奪うという話を聞いても、どこかで単純作業や、力仕事を想定していました。感情が重要視される仕事はまだまだ奪われないだろうと思っていたのです。しかし、アイドルもいままで蓄積してきたファンのデータから、ユーザーが求めている行動を取る点ではエヴァと変わりありません。人間ではないエヴァとの恋は、恋ではないとも言えますが、アニメの登場人物を好きになることとは変わりありません。ロボットアイドルって勝手に引退したり恋愛したりしないでしょうし、地下アイドルの仕事もロボットに奪われる可能性はありそうです。

『エクス・マキナ』予告編

■姫乃たま(ひめの たま)
地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

HP:http://himenotama.com/
ブログ【姫乃たまのあしたまにゃーな】:https://ameblo.jp/love-himeno/
Twitter:https://twitter.com/Himeeeno

■公開情報
『エクス・マキナ』
6/11(土)より、シネクイントほかにて全国ロードショー
監督・脚本:アレックス・ガーランド 『28日後...』『わたしを離さないで』
出演:ドーナル・グリーソン『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、アリシア・ヴィキャンデル『リリーのすべて』『ジェイソン・ボーン』、オスカー・アイザック『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
配給:パルコ
(c)Universal Pictures
公式サイト:http://www.exmachina-movie.jp

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