「まだまだやることはある」 マイケル・ムーア監督が語る、新作撮影秘話とアメリカ社会の変化

マイケル・ムーア監督インタビュー

「次のミッションはトランプを阻止することだ」

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ーーアメリカ同様、日本もいろいろな問題を抱えている国なのですが、監督から見て、アメリカが日本から学ぶべきだと思うことはありますか?

ムーア:それは新幹線だね(笑)。もともと1800年代にイギリスやアメリカで発明されたものを、日本人は完璧なものにして使っている。アメリカは横断すれば3000マイルもある国なのに、島国の日本に新幹線のような優れた交通機関がたくさんあるのは驚きで、それはアメリカも取り入れるべきだと思うね。だから日本で映画を撮るなら、おそらく新幹線をフィーチャーするだろう。それに加えて、ドイツ人と同じように、日本人も戦争などの歴史を振り返る教育をきちんとしているよね。そこもやっぱり見習うべきところだと思う。あと、ファッションといいテクノロジーといい、日本人は少しクレイジーなところがあるじゃないか。レストランのウェイトレスが女子高生の格好をしている国なんて、世界を見渡してもあり得ない光景だよ(笑)。まるで惑星に来たような感覚になる。それは非常に新鮮で驚きだけど、ちょっと恐くもあるね(笑)。でもまだ知らないことも多いから、1ヶ月ぐらい日本で過ごしてみたいね。

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ーー監督はこれまでアメリカ社会に蔓延る数々の問題を描いてきましたよね。実際にアメリカ社会はよくなっていると感じますか?

ムーア:影響は少なからずあったと思いたい。少なくとも、ほかの国々ではやり方が違っていて、学ぶべきことがたくさんあるということを何世代もの人に教えることができたかなとは思っているよ。いま、僕が作ってきた作品が、アメリカの学校で上映されていたりするんだ。何千人もの生徒たちが僕の作品を観ている。それは僕にとって非常に嬉しいことなんだ。アメリカ社会を見渡してみても、僕が提唱していた方向に動きつつあるかなと思っている。それこそ、イラク戦争反対なんて言っていたのは、当時は僕ただひとりだったわけだからね。その時に比べたらだいぶ変わったかな。僕はあると思っていたが、黒人が大統領になるなんて誰も予想していなかったわけだから。そういう意味では、アメリカ社会も少しはよくなっていると思うよ。ただ、まだまだやることはある。

ーー具体的にいうと?

ムーア:次のミッションはトランプを阻止することだ。アメリカの選挙権を持っている国民の80%は女性、有色人種、18歳から35歳の若者層だから、たぶんトランプは勝たないと思うけどね。僕は個人的にサンダースを支持しているが、彼が民主党の代表になるかはわからない。ただ、アメリカ国民全体をみてみると、トランプは阻止できるはずと思っているし、絶対に阻止しなければいけないんだ。

(取材・文=宮川翔)

『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』予告編

■公開情報
『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』
全国公開中
監督・製作・脚本:マイケル・ムーア
配給:KADOKAWA
原題:WHERE TO INVADE NEXT/2015年/アメリカ/119分/シネスコ/PG-12
(c)2015, NORTH END PRODUCTIONS
公式サイト:sekai-shinryaku.jp

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