『追撃者』マイケル・ダグラスはなぜ史上“最凶”なのか? 狂気に満ちた怪演に迫る

『追撃者』が描く道徳観と狂気

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 原作は、50年代~60年代にかけて、ギミックの王様として名高いウィリアム・キャッスル監督のB級ホラー映画の脚本を数多く手がけた事で知られた、ロブ・ホワイトの名著「マデックの罠」。日本でもティーン向けのミステリー小説として出版され、知る人ぞ知る作品として知られている隠れた名作であり、実は過去に一度アメリカのテレビ映画『Savages』として、74年にすでに映像化されている。

 そのテレビ版で、狂気の大富豪マデックを演じたのが、子役時代のロン・ハワードと共演したシットコム『メイベリー110番』で全米のお茶の間の人気者だった、アンディ・グリフィス。かつて「アメリカの良心」とまで言われたグリフィスが、狡猾な大富豪を演じる皮肉さが、人間の道徳観の危うさを見事に表現している。そして本作では、現在「国連平和メッセンジャー」として活躍しているマイケル・ダグラスが、その役どころを引き継いでいるというのも興味深い。

 原作では、ベンの“道徳観”を強調した意外な結末を迎えるが、『追撃者』として蘇った本作でのマデックとベンの死闘の末に迎えるクライマックスは、テレビ版とも原作とも全く違う。 名優マイケル・ダグラスの怪演と、フランスが産んだ鬼才ジャン=バティスト・レオネッティ監督の描く狂気の世界観が相乗効果を産み、極上のスリラーとして見事に再生したのだ。

『追撃者』予告映像

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『追撃者』
公開中
監督:ジャン=バティスト・レオネッティ
脚本:スティーブン・サスコ
出演:マイケル・ダグラス、ジェレミー・アーヴァイン
配給:ブロードメディア・スタジオ
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