黒木華、『重版出来!』に見る“芝居の引き出し” いかにしてコミカルな役柄をものにした?

 しかし、彼女には、そうした役柄を演じつつも、作り手に「色々な役を演じさせてみたい」と思わせる「演技の振り幅の広さと引き出しの多さ」がある。キャラクターによって演技が違うのは当然といえば当然だが、『小さいおうち』でのタキちゃん、『天皇の料理番』での妻・俊子など「昭和的な女性」というキーワードの中でも、喜怒哀楽のニュアンスをしっかり込められる確かな演技は、作り手にとっては大いなる魅力なのだろう。ある映画関係者が「観ていて飽きない」と黒木を評していたが、彼女が演じるキャラクターは、表向き一元的でも、悲しみやおかしみなど、さまざまな感情を内在させていることが多い。『重版出来!』の黒沢心というキャラクターも、“新境地”ではなく、これまでの役柄の地続きとなっている“適役”という表現が適当なのかもしれない。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
『重版出来!』
毎週火曜22時から放送中
出演:黒木華、オダギリジョー、坂口健太郎、荒川良々、濱田マリ、野々すみ花、永岡佑、前野朋哉、中川大志、高月彩良、武田梨奈、最上もが(でんぱ組.inc)、富山えり子、小日向文世、生瀬勝久、滝藤賢一、要潤、永山絢斗、ムロツヨシ、高田純次、安田顕、松重豊
原作:松田奈緒子「重版出来!」(小学館「月刊!スピリッツ」連載中)
脚本:野木亜紀子
演出:土井裕泰、福田亮介、塚原あゆ子
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/juhan-shuttai/

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