『毒島ゆり子』『不機嫌な果実』『コントレール』……春ドラマ、大胆な“不倫ラブシーン”を考察

 今期の春ドラマは世情を反映してか、“不倫”をテーマとした色気のある作品が多く、女優たちは競い合うように大胆なラブシーンを披露している。女優魂を感じられる演技の数々には、彼女たちの新境地を垣間見ることも多く、今後の映画・ドラマ界を考えるうえでも注目に値するポイントであることは間違いない。そこで、『毒島ゆり子のせきらら日記』、『僕のヤバイ妻』、『不機嫌な果実』、『コントレール~罪と恋~』の四作品を、特にラブシーンに集中してじっくりと鑑賞してみた。

 まず最初は、前田敦子主演『毒島ゆり子のせきらら日記』。ご存知、元AKBの不動のセンター前田敦子が、常に二股恋愛をしていないと不安な政治記者、毒島ゆり子を赤裸々に演じている。アイドルがラブシーンに挑戦するという文言だけでも十分に刺激的だが、彼女の演技は筆者の想像をはるかに超えていた。みんなのアイドルだったあっちゃんが毎回躊躇なくキスをしまくり、ガラス越しとはいえ肌を露出し抱き合う姿を見せるのだから、どうして平常心でいられようか。女優志向の強い前田は映画で様々な役を演じているが、ここまで大胆なシーンはなかったと記憶している。しかも、地上波という衝撃。女優として確実にステップアップしていると言って間違いないだろう。毎回、相手役の男性が変わるという点も見逃せない。あっちゃんがまさか!という展開のフルコースに、眠れぬ夜を過ごす人も多いはずだ。「不倫はしない」というルールを掲げているゆり子が、そのルールを自ら破ってしまうほどの男に出逢い、主導権が握られていく様を今後、前田はどう演じきるのか。浮気と本気に揺れる表情と、そのラブシーンの演じ分けにも着目したい。

 『僕のヤバイ妻』では、相武紗季が伊藤英明との不倫関係で濃厚なラブシーンを演じている。2003年のドラマ『WATER BOYS』で女優デビューをして以来、清潔感のあるイメージで多くのドラマやCMに出演してきた相武は、年齢を重ねるごとにドラマ『ブザー・ビート』や『マッサン』などでヒロインをいびる悪女役を演じる事が増えていったが、それでもセクシーなイメージとはほど遠い存在だった。しかし30歳になる2015年に出演したWOWOWのドラマ『硝子の葦~garasu no ashi~』では、ラブホテルのオーナーで夫は母の元愛人という役を熱演。笑顔を封印し、夫役の奥田瑛二や不倫関係にある小沢征悦らとラブシーンにも挑戦して、女優としての幅を拡げた。満を持しての地上波放送となった『僕のヤバイ妻』では、不倫に燃える女の生々しい情念を、その表情だけではなく官能的な仕草でも表現している。今後の展開でラブシーンがどれくらい鑑賞できるかはわからないが、木村佳乃が怪演と呼ぶべき演技を披露しているので、彼女との演技合戦を見ているだけでも、女の恐ろしさを十分に味わうことができるだろう。プライベートでも結婚し、新たな地平に立った相武は、どんな風にその女優人生を突き詰めようとしているのか。本作を観るだけでも、その覚悟が伝わるはずだ。

 今期のドラマでは、『不機嫌な果実』の栗山千明もすごいことになっている。初回からあまりの飛ばしっぷりに、間違って別の映像作品を観ているかと思ったほどだ。同作は林真理子原作の人気不倫小説をドラマ化したもので、1997年にはドラマ版を石田ゆり子、映画版を南果歩が演じて話題となった。当時は渡辺淳一原作『失楽園』もドラマと映画で大ヒットし、「失楽園(する)」という言葉が流行語になるなど、不倫がブームといえる状況になっていた。『不機嫌な果実』は『失楽園』を後追いするかたちで放送されたこともあってか、そのラブシーンは勢い激しさを増し、石田ゆり子が毎週地上波ギリギリの演技を披露していた。

 フワッとしていて清純な雰囲気の石田なだけに、夫とのセックスレスで悶々とする平凡な主婦が不倫に走る姿には生々しさがあり、当時の筆者にとってはかなり衝撃的な内容だった。ラブシーンの妖艶さは、いまでも不倫ドラマで5本の指に入ると言っても過言ではない名作である。あれから19年、再び社会的に不倫が世間を騒がせている中で、主人公の人妻・麻也子を演じるのが栗山千明だったとは、いったい誰が予想しただろうか。清楚なイメージではあるが、石田に比べどこか真の強さを感じさせる栗山が、市原隼人や成宮寛貴といった旬のイケメンたちと交わる様は、石田のラブシーンとはまた異なる背徳感がある。これまでベッドシーンなど想像もしていなかっただけに、余計に“いけないもの”を見ている感覚に陥るのだ。今作には、橋本マナミや高梨臨も参加しており、彼女たちがどうアクションを起こすのかも楽しみだ。

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