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『キック・アス』ヒット・ガール役、クロエ・グレース・モレッツはどんな女優に成長した?

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 映画やテレビが発明される前から、異星人による地球侵略というテーマは、SFというジャンルの定番の一つだった。特にエメリッヒ監督の『インデペンデンス・デイ』やスピルバーグがSFの古典をリメイクした『宇宙戦争』といった作品では、CGIをフル活用した映像技術の進歩もあり、地球壊滅の規模は益々悪化している。

 『フィフス・ウェイブ』で描かれているのは、謎の知的生命体“アザーズ”による地球侵略だ。彼らの侵略が始まるまでは、ごく普通の女子高生だったキャシーが、たった一人の幼い弟を救い出すため、慣れない銃を片手に生き残った仲間たちと共に“アザーズ”に立ち向かっていく姿を描いた同作。

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 『SF/ボディ・スナッチャー』の如く、人間に姿を変え、人類に総攻撃を仕掛けてくる“アザーズ”と戦うことになるのが、主人公のキャシーを演じるクロエ・グレース・モレッツだ。今年の2月に19歳になったばかりの彼女が、一躍注目を浴びたのはマシュー・ボーン監督の『キック・アス』で演じたヒット・ガール役だろう。

 撮影当時はわずか11歳で、罵詈雑言を浴びせながら極悪人の大人たちを次々に倒していく姿に、世界中の男たちは心を奪われた。撮影前に一か月間サーカスで特訓を重ね、スタントシーンの90%を彼女自身がやりきったという驚異の身体能力を持ち、更に愛くるしい顔で男たちに説教する姿のアンバランス加減が、観客の父性をくすぐった。

 彼女自身は、アンジェリーナ・ジョリーに憧れていて、『ウォンテッド』の看板を観て「私もあんな映画に出たい」と母親と話していたところに『キック・アス』のオファーが来たという逸話も残っている。

 『キック・アス』の前に出演した、マーク・ウェッブ監督の出世作『(500)日のサマー』でも、主演のジョゼフ・ゴードン=レヴィットの“年の離れた親友”として登場。ガールフレンドのサマーとの倦怠期に悩み落ち込む彼を、まるで母親のように慰めている姿が印象に残った。ここでも“小学生に叱咤激励される大人の男”というアンバランスな関係性を展開し、観客の父性をくすぐる。

 子役デビュー以来“男勝りの女の子”というキャラクターが多いモレッツが、『フィフス・ウェイブ』で演じたのは、ごく平凡な今どきの女子高生という役柄だ。インタビューでも「これまで殺し屋とか、特訓を受けてきた人たちを演じてきたけど、銃の扱いなんかしらないふりをするのは奇妙な事だったわよ」というほど、これまで特殊なキャラクターを演じてきた事は、彼女自身しっかり理解している。それゆえに、普通の女の子が異常な状況下で徐々にたくましくなっていく姿を演じるのは、強くて可愛いヒロインという枠だけでは収まらない、彼女の実力の現れなのだ。

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 クロエ・グレース・モレッツが、スティーブン・キングの処女作『キャリー』の三度目のリメイク(テレビ版というのがある)で、タイトルロールのキャリーを演じると聞いたときは、流石に違和感を感じたファンも多かった。原作では“小太りで暗い少女”と表現され、デ・パルマ版でキャリーを演じたシシー・スペイセクは、原作とは真逆の容姿ながら、能力に覚醒する前と覚醒した後の“眼力”の凄まじさで、観客を恐怖のどん底に叩き落とした。

 現代の若者をむしばむSNSを使った陰湿ないじめも盛り込まれ、リメイクされた『キャリー』は、キャリーが虐められる理由の一つである“醜さ”が弱く、狂信的な母親に育てられた可哀想な女の子程度に留まってしまい、クライマックスのプロムでの大暴走も、『キック・アス』のヒット・ガールの復讐にも及ばないという残念な結果に終わった。クロエが悪かったわけではなく、そもそもなぜ彼女が虐められているのかが伝わってこない。『キャリー』という作品について観客が求めていたものと、リメイク版を作ろうとしたキンバリー・ピアース監督が考えていたものとのギャップが、最後まで埋められないまま、完成してしまった悲劇的な作品なのだ。

      

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