石井裕也監督が明かす、ドラマ『おかしの家』で目指したこと「テレビでやったことに意義がある」

石井裕也監督が語る『おかしの家』の手応え

「自分なりの闘い方と踏ん張り方をしないとまずいとは思っています」

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『おかしの家』(c)TBS

――今回のドラマ『おかしの家』を、石井監督的に総括すると?

石井:単純に、この作品の内容含め、やって良かったなって思います。それをテレビでやったことの意義とか価値を個人的には感じていますけどね。いずれにしても、多くの人がものすごくフランクに観たっていう。映画って、どうしても敷居が高くなっちゃう部分があるじゃないですか。だから、テレビという、いろんな状況で観ている人に向かって作品を作れたということは、何か良かったなって思っています。やっぱり、観ている人の顔とか、いろいろ考えましたから。

――というと?

石井:映画っていうのは、どんな時間に観るのであれ、映画館の場内を真っ暗にすることで、作品に集中する環境を作れるじゃないですか。でも、テレビって、そうじゃないから。連続ドラマだったら、途中でやめちゃう人もいるだろうし、お酒を飲んでいて、今日は観なくていいかっていう人もいるだろうし、まあいろんなシチュエーションがあると思うんです。それこそ、家事をしながら観ていたり、子育てしながら観ている人もいるだろうし。そういう人たちを、どうやって振り向かせることができるのか……まあ、そんな偉そうなこと言って、あんまり考えてなかったけど(笑)。

――(笑)。

石井:ただ、そういう目線というか、どういうシチュエーションでみんな観ているんだろうってことは、ちょっと考えましたよね。映画を作っているときは、そういうことはあまり意識しないので。

――映画の場合、それよりも完成させることが大事というか。

石井:そういうことですね。「どうだ、この作品は!」みたいな。ただ、テレビのいちばんのデメリットって、実は音声なんですよね。僕はわりと音演出というか、音の設計を細かくやるタイプなので。映像よりも、むしろ音で勝負が決まると思っているところがあるんですよね。だから、そういう意味で、今回のドラマは、できればヘッドフォンとかで観てほしいなって思っていて。テレビってオンエアだと、あんまりヘッドフォンで観ないけど、DVDとかだったらヘッドフォンで観られるじゃないですか。それで音をしっかり聴いてもらえると、たぶんまるで違うものとして観てもらえるんじゃないかなって思います。

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『おかしの家』(c)TBS

――では最後に、今後の石井監督の予定なども聞かせてもらえますか?

石井:今回のドラマは、撮影期間は短かったですけど、一生懸命やれたし、本気も出せたし、すごく楽しかったんです。やっぱり今後も、それが基本になるとは思います。

――何か具体的に動いているものがあったり?

石井:うーん、どうしようかなって感じです。まあ、年内に何かしらやるとは思いますけど。また一年間、休むわけにはいかないので(笑)。

――(笑)。

石井:ただ、何かものすごくメジャー的なものをやらなきゃいけないっていう気分も、どっかであるんですよね。興行収入何十億とか、そういうものを一回やっておかないと、何も語る資格がないような気がして。もちろん、それをやった上で、またインディーズ映画に戻ってもいいんですけど。

――『舟を編む』では足りないと。

石井:まあ、常にそういうものがやりたいというわけではなく、「当たる」と言って「当たる」ものを一回やっておかないと、ちょっとまずいような気がするんですよね。

――それは石井監督のキャリアとして? あるいは日本映画全体の状況として?

石井:一応、自分の話ですけど……まあ、映画業界的にも、今が正念場ですからね。大メジャーでもインディーズでもない、いわゆる中間映画がなくなっているというのが、まあ一般論としてあって。本当だったら僕も好き勝手にやりたい気分はあるんですけど。まあ、自分自身の考えもあるので、自分なりの闘い方と踏ん張り方をしないとまずいなとは思っています。

(取材・文=麦倉正樹)

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■リリース情報
『おかしの家 DVD-BOX』
3月23日(水)発売
価格:12,312円(税込)
DVD4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)
原作協力:山田タロウ「うちのネコが訴えられました!?ー実録ネコ裁判ー」(KADOKAWA刊)
脚本:石井裕也、登米裕一
演出:石井裕也、池田克彦
出演:オダギリジョー、尾野真千子、勝地涼、嶋田久作、前野朋哉、八千草薫
発売元:TBS
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBS

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