NHKドラマは震災とどう向き合ってきたか? 『恋の三陸 列車コンで行こう!』に見る描写の変化

 3月11日前後になると、NHKは、東日本大震災をモチーフにした単発ドラマを毎年放送している。

 震災の翌年となる2012年に放送された『それからの海』は、吉村昭の小説『漁火』を原案としたドキュメンタリーテイストの群像劇。2013年の『ラジオ』は、女川さいがいFMで働く某ちゃんというハンドルネームを持つ女子高生のBLOGを元にしたドラマだった。どちらも震災渦中の描写はなく、震災以降、被災地で生きる人々の物語となっていた。

 2014年の『生きたい たすけたい』は、震災渦中の混乱状況をリアルタイムで描いたパニックムービーのような緊張感のあるドラマだった。そして、2015年の『LIVE!LOVE!SING!生きて恋して歌うこと』は、今は神戸で暮らす被災した少年少女たちが、立ち入り禁止区域となった福島の故郷に向かうロード―ムービーとなっており、ドラマ後半になると、実際に撮影した禁止区域の姿が、幻想的な映像の入り混じった形で描かれていた。

 震災ドラマは、実際にあった出来事をドラマ化するため、どうしてもドキュメンタリーとフィクションのはざまの作品となっていく。また、震災を描くといっても震災渦中の出来事と震災以降の日本を描くのでは見せ方は大きく違ってくる。仮に震災の渦中を描くにしても実際のニュース映像を使うのか、津波のシーンをCGで再現するのか、あるいは、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)のようにミニチュアを使ってワンクッション間に挟むのかによって、視聴者に与える印象は違ってくる。つまり、実際に起きた悲劇的な出来事であるために、作り手がどのような距離感で作品に挑めばいいのかが、毎回問われるのだ。

 そして今年は、スペシャルドラマではなくNHKの土曜9時枠で『恋の三陸 列車コンで行こう!』が全三話のドラマとして放送された。物語の舞台は岩手県大船渡市。西大船渡市役所・地域復興課に勤める岩淵由香里(松下奈緒)が主人公のドラマだ。物語は街おこしのイベントとしておこなわれた列車コン(電車を使った合コンイベント)に偶然乗り合わせた大迫達也(安藤政信)と由香里が再会する場面からはじまる。

 達也は由香里の姉・綾佳(笛木優子)と結婚した義理の兄。東京で銀行員として働いていたが、地元の名産品であるサンマを使用したラーメンを完成させて、町おこしのB級グルメとして売り出すために戻ってきたのだ。達也の帰還は由香里たち岩淵家の人々に波乱をもたらす。長女の綾佳は2011年の東日本大震災の影響で発生した津波によって行方不明となっていたのだ。

「帰ってほしいんです。東京さ。彩佳はもういないのよ」

 母の晴子(松坂慶子)は達也に言う。しかし達也は、綾佳と向き合うためにも、綾佳が作ろうとしていたサンマラーメンを完成させたいと申し出る。

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