『恋人たち』プロデューサーが語る、“作家主義の映画”を成功させる方法

『恋人たち』プロデューサーインタビュー

小野「短い時間でやろうとすると、スタッフの人数も増えていく」

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高根:今後、どういう作品を作るかは決まっているんですか?

深田:一応、4作目まではすでに決まっています。『恋人たち』で、我々がやっていることのカラーはある程度、はっきりしたと思うので、ワークショップから無名の俳優さんを起用して監督のやりたい事をやる、という路線は続けたいと思っています。

高根:ワークショップ映画というと、去年は濱口竜介監督の『ハッピーアワー』も大きな話題になりましたね。

深田:『ハッピーアワー』はまだ観ていないんですけれど、濱口監督のインタビューを読んで、「俺もこういうことをしたかったんだな」と思いました。メジャーの映画に低予算の映画が対抗するには、たっぷり時間をかけて映画を作るしかないと考えていたのですが、濱口監督はまさにそういう戦略を採っている。ただ、僕らは実際にそれをやってみようとしたものの、できなかったんですよ。結局のところ、メジャー映画のやり方を踏襲しています。(参考:なぜ無名女性たちの演技が国際的評価を得た? 『ハッピーアワー』監督が語る“傾聴”の演技論

小野:『恋人たち』もワークショップ映画のため、キャスト費などは抑えられているのですが、スタッフの拘束費はかかってしまうので、撮影日数を減らすことで予算を抑えるというやり方になりました。やっぱり、一流のスタッフを集めようとすると、そうせざるを得ないんです。『ハッピーアワー』の主演の方たちは、普段は別の仕事をしていて、週1回集ってワークショップを開き、そのたびに人間関係を築きながら、土日だけで8ヶ月かけて撮っていったそうで、それが映画にもうまく現れていたと。すごく理想的な撮り方ですが、我々の場合はスタッフの長期拘束というわけにはいかなかった。『ハッピーアワー』がその辺りの問題をどう解消したのかは、とても気になりますね。

深田:『滝を見にいく』も、本当は1ヶ月くらいかけて撮りたかったんですよ。アマチュアの方も参加しているから、彼女たちをじっくりと撮影していく中で、良いところを切り取っていきたいなと。でも、スタッフのスケジュールは最初から全部決まっていて、秋の屋外撮影だったから余計に時間は限られていた。陽がどんどん暮れる中、「やっぱり映画の撮影はこういうものなんだな」と感じていました。すごく急いで撮っていく感覚がありましたし、時間がかけられたらもっといいものができたろうという後悔は残っています。

小野:短い時間でやろうとすればするほど、スタッフの人数も増えていくんですよね。監督の沖田さんは多分、スタッフが少なければ少ないで、柔軟にできる方だと思うんですけれど、期間的にそういうわけにもいかなかった。各署、可能な限り人数は抑えてくれましたが、それでも膨れてしまったのです。大根仁監督の『恋の渦』は、4つの部屋だけで撮っていて、かなり低予算だったそうなんですが、内容も素晴らしく、映画としてちゃんと成立しています。ただ、それは脚本自体が低予算作品とマッチしていた面も大きいので、その予算感を一般化できる話でもない。映画を生業としている方々もプロとして生計を立てているので、我々がきちんとビジネスとする以上、ボランティアやわずかなギャラでお願いしてはいけない。理想的な撮り方をするには、やはり試行錯誤が必要ですね。

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