ティーンムービーはローリスク・ハイリターン!? 『黒崎くん』の驚くべき効率の良さ

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 十中八九『オデッセイ』の四連覇になると思われた先週末の動員ランキング。初登場1位を奪取したのは、まさかの『黒崎くんの言いなりになんてならない』だった。「まさかの」というのは、Sexy Zoneの中島健人主演作品とはいえ、本作が非メジャー配給作品(ショーゲート配給)、全国160スクリーン公開の中規模作品だから。土日2日間の動員15万7680人、興収1億9070万5900円という数字は1位としては決して高くない数字だが、それでも作品の仕上がりから推測することができる製作費や、その公開規模を考えると望外の好成績と言えるだろう。

 売り出し中の役者(つまり出演ギャラが高騰する前の役者)を中心とするキャスティング、キャリアの浅い監督(つまりギャラが高くない監督)の抜擢、過去の世界でも未来の世界でもない現代の学校やその近所が主な舞台であることからくる撮影コストの安さ、製作に関わったテレビ局の番組での番宣のしやすさ、などなど。もともと、少女マンガ原作作品を中心とするティーンムービーが量産されている背景には、他のジャンルの作品と比べて製作費においても宣伝においても効率がいいという事実があるが、『黒崎くんの言いなりになんてならない』はそんな中でも際立った作品である。

 まず、本作の公開の約2月前となる昨年12月22日~23日に、映画でも企画製作を担っている日本テレビ系の深夜ドラマ枠でスペシャルドラマが放送されたこと。これは、スペシャルドラマの放送自体が公開を控えた映画のプロモーションとして有効であるのはもちろんのこと、何よりも売り出し中の役者のスケジュール(つまり出演契約)をドラマと映画で同時に押さえられるという点で極めて効率がいい方法である。近年、テレビ局が自社作品の映画化作品と同時期にスペシャルドラマを製作して放送されるのは珍しいことではないが、それも基本的には同じ理由から。ただ、2014年公開の『劇場版 仮面ティーチャー』をはじめとして、日本テレビとジャニーズは、初ドラマ化の時点で映画の撮影までスケジュールを組み(演出と客演の一部のみがドラマと映画で異なる場合が多い)、それを低視聴率などで叩かれるリスクのあるゴールデン&プライム帯ではなく深夜ドラマ枠でまず放送するという安全なスキームを「開発」した。つまり、そもそもそのスキームから生まれる作品は中ヒットすれば十分なわけで、今回の『黒崎くんの言いなりになんてならない』のようにナンバーワン・ヒットになるようなことは想定されていないはずなのだ。

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