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宇野維正の興行成績一刀両断!スペシャル対談

2015年映画興行成績の実態は? 松谷創一郎 × 宇野維正が徹底検証

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 『ジュラシック・ワールド』や『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』などの大作が次々に公開され、好調だったといわれる2015年の映画興行成績について、ライター、リサーチャーの松谷創一郎と、本サイト主筆の宇野維正が語り合う。(編集部) 

宇野「テレビ局の映画への関与の仕方が転換期にきている」

宇野:2015年は夏から毎週このサイトで動員ランキングをもとにしたコラムを連載していて、年間を通じても興行成績が良かった年という印象があるのですが、実際はどうだったのでしょう?

松谷:日本映画製作者連盟が1月末に発表した統計(日本映画製作者連盟・過去データ一覧表)によると、総興行収入は過去最高だった2010年の2207億円に次ぐ2171億円となりました。2010年は『アバター』や『アリス・イン・ワンダーランド』など、3D映画がヒットした年ですね。

宇野:おぉ、あの年の次というのは、結構すごいことですよね。

松谷:すごく良かった年です。ただ、僕は11月までの段階で「もしかしたら過去最高になるかも」と考えていたので、思ったほど伸びなかった印象です。約40億円の差なので、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』がもう少し伸びて、あと一本ヒット作があれば違う結果になったと思います。

宇野:確かに、秋が深まってから急に失速しましたよね。日本ではほかの大作が『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開前後から逃げちゃったので、それも大きかったかもしれませんね。ちなみに本国アメリカでも、スピンオフを一本挟んでの次の『スター・ウォーズ』続編の公開が2017年の夏から冬に変更されて、同じ2017年冬に公開が予定されていた『アバター2』が逃げて公開を先送りにしちゃいましたよね。そういう調整要素っていうのは、海外でも同じようにある。

松谷:日本では『オデッセイ』も『ブリッジ・オブ・スパイ』も1月に逃げちゃいましたからね。加えて『妖怪ウォッチ』も前年ほど当たらなかった。そういった要因が重なって、過去最高とはならなかったのでしょう。一方、2000年以降では入場者数が4番目でした。興行収入の高さと一致しないのは、一人あたりの単価が上がったためです。平均単価が2013年の1246円から2014年の1286円に上がったのは、消費税分でしたが、今回はさらに17円プラスして1303円になりました。1300円台は初めてで、これは4DやIMAXなどの影響です。

宇野:単価が上がったのも印象的ですが、夏のハリウッド大作ラッシュもすごかったですね。『ミニオンズ』、『ジュラシック・ワールド』、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネーション』と、すべて50億を超えています。

松谷:洋画は昨年特に良かったと言われていますね。たしかに50億を超える作品がこれほどあるのは久しぶりのことです。でも、一昨年のシェアは邦画58.3%、洋画41.7%で、昨年は邦画55.4%、洋画44.6%だったので、劇的にその比率が変わったわけではないんですよ。

宇野:2012年に邦画65.7%、洋画34.3%と洋画が急激に底を打った年から次第に回復してきて、その直前の2011年時の邦画54.9%、洋画45.1%という水準に戻っただけなわけですね。

松谷:もしかしたら邦洋逆転もあるかと思ったのですが、結局は邦洋のシェアは10%以上も離れています。だから、洋画が調子いいとはいっても、超大作だけではなく10億〜20億規模の作品も増えていかないことには、邦洋逆転はないんですよ。

宇野:なるほどねぇ。確かにその規模の洋画の中ヒットが確実に減ってきてますよね。洋画系の配給会社の再編が始まっているのとも無縁じゃない気がします。なにしろ、1998年から2002年の頃は大体邦画3割洋画7割でしたからね。それが10年後の2012年にはすっかり逆転してしまった。たった10年で国内ものと海外ものがここまでドラスティックにひっくり返った分野って、他にないんですよね。ただ、傾向としてはこのところ洋画が持ち直してきてはいる。これは感覚的な推測に過ぎないんですけど、邦画における“テレビドラマの映画化”の流れがだいぶ落ち着いてきたのが、ひとつの要因なんじゃないかと思うんですよ。この間びっくりしたのは、今年公開予定のテレビドラマの映画化作品って、今公開中の『信長協奏曲』と『さらば あぶない刑事』しかないんですよ。すごく象徴的だったのは、EXILEのAKIRAが出演していた昨年のドラマ『HEAT』(関西テレビ)の視聴率が最低2.8%と記録的な低さで、もともと映画化前提だったのが立ち消えになったこと。98年にドラマ『踊る大捜査線』が映画化して大ヒットして以降、“テレビドラマの映画化”は邦画の潮流のひとつになって、その後の邦画優勢に繋がっていったけれど、ここにきて転換期が訪れているのかもしれない。

松谷:そうですね。邦画の原作タイプ別興行収入(※図1)を見るとより顕著なのですが、この2〜3年はたしかに、全般的にドラマ映画のヒットは減ってきています。去年は『HERO』が46.7億円で悪くはないのですが、2007年の映画第一作は81.5億円でした。『踊る大捜査線』も最後の方はかなり興行収入が落ちていましたし、『相棒』も去年は映画化しなかった。13.1億円の『劇場版 MOZU』はそれなりに当たりましたが、目標ほどではなかったはずです。10.6億円の『ST 赤と白の捜査ファイル』も伸びませんでした。

宇野:それなりにヒットしたのは『HERO』みたいな一昔前の作品ですよね。本当は『半沢直樹』とかを映画化できれば良かったんだろうけれど、人気俳優に対してのテレビ局の求心力も低下している。ただ、先日東宝とTBSが製作した『64(ロクヨン)』の試写を観たら驚くべき完成度で、テレビ局出資映画の底力を見ました。同じ原作はNHKでもドラマ化されていて、それが見事な出来だったので、映画のスタッフにはかなりプレッシャーもあったと思うのですが、それを見事に跳ね返す仕上がりで。

松谷:自分も『64(ロクヨン)』のドラマには感心していたので、映画化はどうなんだろう?と思っていたのですが、そこまで言われると期待ができそうですね。

宇野:結局のところ是枝裕和監督の近作もフジテレビがお金を出資しているわけで、一概にテレビ局映画って言っても様々なんですよね。テレビ局が製作する映画の成り立ち自体が、自社のテレビドラマを映画化する役割から、そことは独立したものに変わりつつある。

松谷:日本テレビが製作幹事の『桐島、部活やめるってよ』(2012年)が、興行成績は奮わなかったものの内容的に評価されたことで、風向きがちょっと変化しつつあるのかもしれないですね。

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