スピルバーグ、ハワード、ゼメキスーー ハリウッド大御所の新作「軒並み総倒れ」状態を考える

ハリウッド大御所監督「興行不振」を考える
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 2015年の年末から2016年の年始にかけて、東宝、松竹、東映の邦画メジャー3社が発表した2016年の公開作品ラインナップ。それを眺めていて驚かされたのは、1998年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE』をきっかけとして、この17年間あれだけ量産されてきたテレビドラマの映画化作品が、1月公開の『信長協奏曲』(東宝)と、テレビドラマが放送されていたのは約30年前の『あぶない刑事』(東映)、そのたった2本しか予定されていないことだった。つまり、少なくとも現在発表されている範囲では、2016年2月以降は、テレビドラマ映画化作品が1本も新作公開されないということになる。時代は変わるものだ。

 その2本のうちの1本、『信長協奏曲』が全国325スクリーンで公開された先週末。土日2日間の動員は46万5956人、興収は6億1598万8400円といずれも堂々1位。この数字をもって、「なんだ、まだテレビドラマ映画もいけるじゃないか」と思う人がいても無理はない。しかし、近年のテレビドラマ映画化作品で大ヒットした作品のほとんどが、その元となったテレビドラマの放送から10年近く経ってからの続編映画や続々編映画であることをふまえると、やはり『信長協奏曲』のヒットはあくまでも例外的な出来事と言うべきだろう。また、本作にはテレビドラマ映画化作品という文脈以外にも、人気コミックの実写化作品という、現在もなお有効なトレンドに沿った作品であることも見過ごせない。

 また、テレビドラマ映画化作品が邦画メジャー各社のラインナップから絶滅しかけているからといって、それ以前の時代の日本の映画興行界の主流であったハリウッド映画が復権するかというと、そう単純な話ではない。そんな事実を突きつけたのも、今年1月の動員&興行ランキングの顕著な傾向だった。1月8日に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督作『ブリッジ・オブ・スパイ』、その翌週の1月16日に公開されたロン・ハワード監督作『白鯨との闘い』、そして先週末公開されたロバート・ゼメキス作『ザ・ウォーク』。今年の1月は空前のハリウッド巨匠作品公開ラッシュだったのだが、順番にそれぞれ初登場5位、初登場7位、初登場8位と大苦戦。『ブリッジ・オブ・スパイ』以外の2作品は本国アメリカでの興行でも苦戦を強いられた作品だったとはいえ、「それにしても」である。

 80年代、90年代を映画ファンとして過ごしてきた世代ならば鮮明に記憶しているように、スピルバーグといえば長年、洋画界、いや、日本の映画興行界全体における圧倒的なナンバーワン・ブランドだった。そのせいで、監督作じゃないプロデューサーや製作総指揮として名を連ねているだけの作品でも、監督名よりもポスターに大きく名前がドカーンと載っていて紛らわしいという弊害もあったものの、それも含めて日本の老若男女すべてに比類のない神通力を持った名前だった。そこに陰りが出てきたのはゼロ年代に入ってから。つまり、テレビドラマ映画全盛の時代になってからだ。

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