スーパーヒーローをリアルに描くと……? 『デアデビル』が見せる濃密なクライムドラマ

『デアデビル』、リアル志向で描くもの

 すでに熱狂的人気で迎えられているNetflixオリジナルドラマ『デアデビル』は同名のコミックを原作とするマーベルヒーローシリーズであるが、都市犯罪アクションとしてもその完成度の高さに目を見張るものがある。

 官能的な色光がアスファルトに滲む夜のニューヨーク、その一角ヘルズキッチンにうごめく闇組織による犯罪を阻止すべく、主人公マット・マードック(チャーリー・コックス)は覆面の男「デアデビル」となって戦う。こうして書くと勧善懲悪なヒーローものが想像されるかもしれないが、実質は濃密なクライムドラマという印象が強い。

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(C) Netflix. All Rights Reserved.

 「デアデビル」=マットは幼い頃の事故で放射性廃棄物質を目に浴び視覚を失った代わりに超人的感覚を手に入れた。昼はスティックをつく紳士的な弁護士として活動するが、夜は暴力によって悪人に裁きを下す。そんな2面性を抱え、正義と悪の狭間で葛藤する主人公だ。そしてもう1人ストーリーの軸となるのが、スーツに身を包んだ巨漢の実業家ウィルソン・フィスク。彼は生まれ育った町ヘルズキッチンの再興を目指し、そのためならば殺人も厭わない。とはいえ一面的な悪役ではなく、一人の男として純粋に恋愛していたりもする。(ちなみに演じるヴィンセント・ドノフリオは、なんとあの『フルメタル・ジャケット』でハートマン教官にしごかれ続ける“微笑みデブ”レナード!)

 そんな鏡像的な2人のメインキャラクターが出会うのは後半になるが、彼らを軸に周辺のキャラクターらのストーリーも積み重ねられていく構成によって、都市を舞台にした群像劇が立ち上がる。単一の視点に回収されない重厚なシナリオだ。映像面においては影を強調したフィルム・ノワールな画面が特徴的で、とりわけナイトシーンでは空間のみならず人物の顔すらギリギリの暗さの中で映し出され、緊張感とともに我々を闇の世界へいざなう。

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