海外ドラマライター・今祥枝が選ぶ、冬休みにイッキ見したいNetflixドラマ4選

NARCOS ナルコス

 当サイトに作品評があがっているので、詳しくはそちらを参照のこと。(参考:なぜ『ナルコス』は数ある“麻薬モノ”の中で突出して面白いのか?)実録ゆえの説得力に迫る)1980年代、世界市場を急速に支配したコカインで財をなし、コロンビアで麻薬密売組織「メデジン・カルテル」を創設したパブロ・エスコバルと、取締捜査官や政府の血で血を洗う壮絶な戦いに目が釘付け。実録ドラマらしい余計な装飾が排除されているので、サクサク話が進むのもいい。コロンビアが舞台なのでスペイン語がかなりの部分を占めるが、これもまた今期の米国テレビ業界のトレンドだ。こちらもゴールデングローブ賞に複数ノミネートされている。「ブレイキング・バッド」が好きな人にもオススメ。2016年4月公開予定の話題の映画「ボーダーライン」の予習としてもぜひ。

MAKING A MURDERER 殺人者への道

 現在進行中の刑事事件をシリーズ化して、言い方は悪いが娯楽として見せるのも米国テレビ界の新たなトレンド。原語で聞き取るのが難しい場合は日本語吹替もあるので、ワイドショー感覚で流し見することから始めるのもオススメ。アメリカでは有名な事件でも日本人にはほとんど知られていないので、最初は「こんな事件があるのか~」とゴシッピィな感覚で視聴するも、だんだんとアメリカの村社会の問題点が顕著になってくるあたりから、ガチの社会派の様相を呈して別の意味で目が離せなくなる。閉鎖的な村社会での人間模様はTVシリーズ版も大傑作の「FARGO/ファーゴ」に通じるものもあるが、本作は正真正銘実話だからしゃれにならない。ドキュメンタリー作品のルネサンスとも評される内容は、事実を積み重ねていく過程に価値があるので、いわゆるフィクションのように“よくできた物語”を期待しないように。

 Netflixオリジナル・シリーズ以外では、長年上陸が望まれていた秀作として、1980年代の東西冷戦下のアメリカを舞台にしたスパイ・サスペンス「ジ・アメリカンズ」と、悪名高きバイク・クラブ“SAMCRO”の無法者たちのぶっとんだ日常を描いた傑作「サン・オブ・アナーキー」を激しく推す。アメリカのベーシック・ケーブル局の中でも特に個性的で作家性の強い番組作りを続けてきたFXの作品で、同局は「ダメージ」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」から「FARGO/ファーゴ」まで、実にエッジの効いた作風が刺激的で面白い。この機会にぜひ!

 また、既に当サイトに作品評があがっているNetflixオリジナル・シリーズの「センス8」「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」「アンブレイカブル・キミー・シュミット」も間違いなく面白いので、年末年始の気分に合わせてチョイスしてみてほしい。

参考:ウォシャウスキー姉弟の新境地! Netflixドラマ『センス8』が伝えるメッセージとは何か
参考:女性刑務所の日常はヘヴィーなだけじゃない? 『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』が共感を呼ぶ理由
参考:Netflixは日本のコメディー市場を切り拓くか? 『アンブレイカブル・キミー・シュミット』に見る大人のエンタメ性

■今祥枝
映画・海外ドラマライター。「BAILA」「日経エンタテインメント!」「エクラ」「オレンジページ」「ブリリアントシネマクラブ」「シネマトゥデイ」など雑誌・ウェブで連載。ほかプレス作成、劇場用パンフレットにも寄稿。時々ラジオ、映像のお仕事。著書に「海外ドラマ10年史」(日経BP社)。

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