2015年も“朝ドラ”が圧勝だった理由は? 大きく変わるドラマ視聴環境を考察

2015年のドラマシーンを統括

 だが、そんな硬直化する民放地上波とは違う新しい流れも生まれつつある。NetflixやHuluといった、WEB発の定額有料動画配信サイトだ。NetFlixは『アンダーウェア』を、フジテレビと共同で制作している。Huluも『THE LAST COP/ラストコップ』や『フジコ』といったオリジナルドラマを制作しており、他にも無料動画サイトGYAO!が、白石和彌・監督、根本宗子・脚本で15分の連続ドラマ『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』を手掛けたりと、動画サイトが配信だけでなく、制作にも乗り出すケースが今年に入って増えている。

 今までは、NHKや民放各局に較べて、動画サイトの番組制作能力は弱かった。批判も多いが、毎クール、一定水準のテレビドラマを量産し続けてきたテレビ局の制作能力は目を見張るものがあり、かつての邦画における撮影所システムのようなものが機能している。それに対し、ニコニコ動画等の動画サイトは素人の投稿に頼った二次創作による消費行為がほとんどだった。しかし、Netflixが『ハウス・オブ・カード 野望の階段』でドラマ制作能力の高さを証明して以降は、その構図が崩れてきている。

 もちろん、有料動画サイトの国内における影響力は、まだ微々たるものだろう。しかしCMがなく、ドラマを一気見できる動画サイトには、地上波のテレビを何となく見ていた視聴者とは違う、映像作品を貪欲に楽しみたい視聴者がいる。良き観客と良き作り手が集まる場所には、おのずと良き作品が生まれるというのは、自分でも理想主義的かと思うが、民放地上波の停滞をみていると肩入れしたくなってしまう。Netflixでは、今年の芥川賞を受賞した又吉直樹の小説『火花』が、来年の春に連続ドラマ化される。本作がどのように受け入れられるかによって、テレビとネットをめぐる状況も、また大きく変わっていくだろう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■作品情報
Netflixオリジナルドラマ『火花』
2016年春オンラインストリーミング予定
(C) Netflix. All Rights Reserved.
公式サイト:http://hibana-netflix.jp/

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