シリーズ歴代作品の興収との比較から見る、『007 スペクター』の真価

興行収入から見る『007』の真価

 90年代からしばらく日本では興収10億台をうろうろしていた『007』シリーズだったが、ダニエル・クレイグが初めてボンドを演じた『カジノ・ロワイヤル』は興収22.1億と久々の大ヒット。続く『慰めの報酬』も作品の評価は奮わなかったもののギリギリ20億円台にのっかっている。実はアメリカをはじめとする海外のほとんどの国では、その『慰めの報酬』と続く『スカイフォール』の間で興収が2倍近くに跳ね上がるという現象が起こったのだが、日本での『スカイフォール』の興収は27.5億にとどまっている。往年の人気シリーズとしての完全復活を印象付けた『スカイフォール』だったが、相対的には「日本ではもっと大ヒットしてもよかった」と言える作品だったのだ。

 『007』のように50年以上にも及ぶシリーズの場合、歴代作品の興収との比較はインフレ率を勘案しなければならないのだが、それでも全世界興収において『スカイフォール』は、ショーン・コネリー時代の『サンダーボール作戦』(1965年)と『ゴールドフィンガー』(1964年)に次ぐ歴代トップ3に入る記録と言われている。そしてまさに今、そのトップ3の牙城を『スペクター』が崩そうとしているのだ。バーバラ・ブロッコリ&マイケル・G・ウィルソンの製作チームが「次作もダニエル・クレイグで!」と切望しているのも当然のことだろう。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、2016年1月16日発売。Twitter

■公開情報
『007 スペクター』
公開中
監督:サム・メンデス
主題歌:サム・スミス「ライティングズ・オン・ザ・ウォール」
出演:ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レイフ・ファインズ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ、イェスパー・クリステンセン、アンドリュー・スコット、デイヴ・バウティスタ
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