『Re:LIFE〜リライフ〜』が映画好きの心を掴む理由ーー作中に散りばめられたエピソードを読む

『Re:LIFE〜リライフ〜』の映画愛を読む

 ビンガムトンという都市をご存知だろうか。アメリカ合衆国ニューヨーク州にあり、ロサンゼルスから4,432キロ、ニューヨーク市からも北西に277キロと離れた雨と曇りが多い都市である。全米で1959年から放送された大ヒットTVドラマ『トワイライトゾーン』の生みの親ロッド・サーリングの故郷でもあり、第1話の核となるシーンは、世界一、回転木馬が多いとされるこの場所で撮影された。マーク・ローレンス監督は青春時代を過ごしたこの土地を今作の舞台として意図的に決めたという。

 『Re:LIFE〜リライフ〜』の舞台はニューヨーク北部の田舎街に、ヒュー・グラント演じるキース・マイケルズがロサンゼルスから都落ちするシーンから始まる。栄冠から15年、オスカー賞を受賞したはずの脚本家は妻子に逃げられ、仕事を選り好みし続けた結果、電気まで止められるほどの生活苦を強いられていた。エージェントの勧めでしぶしぶ、脚本を教える大学の講師として赴任するも、あくまでもハリウッドで活躍する脚本家として大見得を切る。無論、「脚本家は才能あってこそ」の持論を貫き、教えることに何の興味をもたず、教職を毛嫌いするほどだった。開講にあたって提出された脚本には一切目を通さず、受講希望者をSNSでリサーチをかけ、好みの女子生徒と冴えない男子生徒10名を選出した。ビンガムトンに到着するなり、意気投合し、一夜をともにした女子学生カレン・ギャブニーもそのひとりだ。就任早々、調子に乗ったキースは講義を5分で切り上げるという事実上の放棄に加え、懇親会では大学の倫理委員長でもあるメアリー・ウェルドン教授が敬愛しているイギリスの女流作家、ジェイン・オースティンについて無礼な批評をし、最悪なスタートを切ってしまう。そこに、講義の選抜から漏れたものの復学した生徒ホリー・カーペンターが、直接脚本の講評をキースに依頼したのをきっかけに「ハリウッドの一脚本家」から第二の人生を歩み始める。

 今作で注目したいのは、「映画の脚本」という講義を展開するにあたって具体的な映画作品や文学作品が取り上げられていることだ。キースが堅物なウェルドン教授にオースティンの『エマ』をパロディ化した『クルーレス』をプレゼントしたり、ロビン・ウイリアムズが教師役を演じ「教科書なんか破り捨てろ」と教えた『いまを生きる』を持ち出して皮肉ったりなど、映画好きにはたまらないギミックが散りばめられている。なかでもシングルマザーとして働きながら復学を果たしたホリー・カーペンターが愛読していた『遅咲きの人々』は、いくつになっても努力すれば実を結ぶというエピソードが満載であり、のちのキースの人生に大きな意味をもたらし、ストーリーの核心へと導く。また、劇中にも使用された『トワイライトゾーン』のワンシーン「過去ばかりを振り返らずに前へすすめ」というセリフは、暗に迷えるキースの背中を後押ししている。

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