本国フランスで大ヒット 『カミーユ、恋はふたたび』が描く、舞台装置としてのタイムトラベル

『カミーユ、恋はふたたび』の魅力に迫る

20151109-CR06.jpg
(c) 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma

 と、ストーリーラインを文字にすると、分かる人には一目瞭然だと思うが、本作はタイムトラベルものの中でも、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ペギー・スーの結婚』(1986)にそっくりそのままだ。プロットも全く同じで、違う年代の同一人物を同じ役者が演じている点も同じ、それぞれの作品の主人公、カミーユとペギー・スーのキャラクター設定にも類似点が多く見られる。それも無理はない。本作は、ルヴォウスキーが敬愛するこの『ペギー・スーの結婚』に捧げられているそうだ。唯一異なるのは、『ペギー・スーの結婚』でペギーがタイムスリップするのが1960年代だったのに対し、『カミーユ、恋はふたたび』でカミーユがタイムスリップするのは1980年代だ。これはもちろん、ルヴォウスキー自身が体感した青春時代が反映されているのは言うまでもないだろう。劇中でも、Nenaの「99 Luftballons」やKatrina & The Wavesの「Walking On Sunshine」など、80年代の名曲が印象的に使われていたり、『アメリ』や『イヴ・サンローラン』でコスチュームデザインを担当したマデリーン・フォンテーヌが手がけた80年代ファッションが、作品のトーンを印象付けているのも魅力のひとつである。

20151109-CR11.jpg
(c) 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma

 ルヴォウスキーは本作でタイムトラベルをあくまで映画の中での舞台装置として機能させている。たとえ過去に戻ることができたとしても、変えることができないことがあるからこそ、輝かしい青春時代はかけがえのないものだと気付かせてくれる。過去にタイムスリップをして2度目の青春時代を経験したカミーユが、現実世界に戻ってエリックに話す言葉に、その全てが込められているのである。過去を過去としてきちんと消化し、未来の自分にどう繋げていくか。ラストシーンで雪景色の中1人歩き出す彼女の後ろ姿には、そんな未来への希望が光っているように見えるのである。

20151109-CR08.jpg
(c) 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma

 作品のテイストや描き方こそ異なるものの、本作が描くテーマは、くしくも本サイトでも先日紹介した、同じくフランス映画界の重要人物オリヴィエ・アサイヤス監督の『アクトレス〜女たちの舞台〜』と通じるものがある。全く異なるアプローチで“過ぎ行く時間”を描いたこの2作を見比べてみるのも面白いのではないだろうか。

(文=宮川翔)

■公開情報
『カミーユ、恋はふたたび』
新宿シネマカリテほか全国公開中
原題:Camille Redouble
配給:ノーム
(c) 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma
公式サイト:camille-futatabi.com

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる