ゆるめるモ!× 朝倉加葉子監督が明かす、映画『女の子よ死体と踊れ』の撮影秘話

ゆるめるモ!映画インタビュー

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(C) 2015 YOU’LL MELT MORE! Film Partners

もね「お手洗いに行けないのが一番大変でした」

ーーゆるめるモ!のメンバーの皆さんが大変だったところはどこでしょうか?

けちょん:私はそんなに大変ではなかったけど、強いて言えば、銃を撃つシーンのマシンガンが重くて、指が痛かったくらい(笑)。あと、銃で追いかけるシーンの廊下がすごく滑って、曲がり角でコケないように走るのが大変でした(笑)。

もね:お手洗いに行けないのが一番大変でした。寒いけど、1時間は我慢してようと時計を車で見ていて、トイレが近くなってくると発作が(笑)。簡易トイレが欲しいなと思ってました。

朝倉:ロケが山の中だとトイレがないので、撮影中に車で「トイレ便」を出したんです。

ようなぴ:寒かったこと以外はないかも。あと、待ち時間が長いから、車の中で待ってるとケータイも電池が無くなるし、寝てました。山の中で電波もないし、雨も降ってるから外にも出られないし。

あの:いっぱいあって(笑)。1日目の初の撮影が、森に行ってひとりで銃に撃たれるシーンで、一発OKじゃないといけなくて。緊張感の中、森の地面に倒れると痛いし、「この先大丈夫かな」と思ったんですよ。常に寒いけど、死体だからじっとしてないといけなくて、体がカチコチになって「この先やってけない」と思ったり(笑)。3日目か4日目は、崖を登るシーンがあって大変で、スタッフさんに支えられても登れないんです、ミミズやダンゴムシがいるから嫌だし。屋上のシーンも寒いのに、ロウソクのロウが垂れて飛んできちゃうんですよ、「ワーッ!」ってなって(笑)。みんなが血を垂らすシーンでも、寒いのに冷たいものが私に落ちてきたので、SMプレイかなって(笑)。

しふぉん:森の中で武器を見つけて持って逃げながら転ぶ演技のシーンは、地面がグチャグチャだし、着替えもないし、ドロドロで何度もやったんで、心が痛くなりました(笑)。

ーー泥だらけの衣装はどうしていたんですか?

しふぉん:次の日までにマネージャーが洗って乾かしてました。

朝倉:衣装がステージ衣装だから一着しかないんです。話を聞いていて、いやー、ありがたくなってきました。ひどいことが行われている。映画撮影って恐ろしい。

ーーなんで他人事みたいなんですか(笑)。

朝倉:寒い中、みんなはつなぎで多少は暖かかったけど、あのちゃんは衣装が違って地獄だったと思います。

あの:地獄でした(笑)。

ーー監督から見たメンバーの演技はいかがでしたか?

朝倉:あのちゃんは、大きく振り幅があると本人も言ってましたけど、死んでるときと、再び生きだすときと、最後と、いろんなシチュエーションがあってがんばってくれました。映画のキーともなる死体をマイナス要素があるものにはしたくはなかったんです。お人形さんみたいに見えてほしくて、そこはとても素敵にやっていただけたなと。しほさん(しふぉん)は、いろいろお願いを言ってがんばってもらったなと思います。具体的には、セリフの言い回しとか。彼女は語尾が疑問形として上がらないんですよ。「これはペンですか?」が「これはペンですか!」みたいになって。疑問形を言い直していて、大変みたいでした。

ーーしふぉんさん、今は疑問形を扱えるようになりましたか?

しふぉん:あんまり人に疑問を持たないかも?(笑) 生きてきて質問とかしない人間なのかな……? でも鍛えられたので、疑問形のセリフが次に来たらがんばります(笑)。

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しふぉん

朝倉:難しいことをお願いしたと思うんですけど、持ち前の部活ノリでがんばってくれました。なぴちゃん(ようなぴ)は、非常にお芝居が明確というか明晰というか、「これをこうするんだ」というのがはっきりしていて、見ていて気持ちいいというか。なぴちゃんには、何か情報を知らせるセリフを意識的に回しましたね。しっくりくるなと思って、期待通りになりました。

ようなぴ:演技したって感覚があんまりないです。自然にその状況に合わせました。

朝倉:イントネーションの付け方や声の出し方も、非常に情報処理能力が高い演技でしたね。いろんなタイプの役者さんがいるけど、なぴちゃんは「情報系」という認識です。もねちゃんは、「存在感」という面白い能力の持ち主だと思います。今回漫画っぽい役柄をやってもらったと思っていて、ガーリーな映画で記号的にガーリーな女の子の役が必要なんだという話をして、それをやってもらいました。彼女のほうからぬいぐるみのクマのイヤリングをつけることを提案してもらったり、お願いしたポイントを100%理解して表現してくれましたね。

もね:あんまり役を作らなくても、可愛いものが好きなので。でも、クマのイヤリングをつけたのはやりすぎたかな?(笑)

朝倉:きっと普段のもねちゃんならやらないようなこともやってくれました。けちょんは、いろいろ相談してゴスっ子をやってもらったんですけど。ゴスっ子の描き方ってどんな映画でも非常に重要だと思うんです。けちょんの柔らかい感じを、魅力的なゴスっ子にあてはめてもらったなという感じがします。けちょんの「本体」にもご出演いただき……。

ーー本体……? あ、けちょんさんの手のひらの目が印象的でした!

けちょん:そうです、目が「本体」です。今日は家で見張りをしています。

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けちょん

ーーあれ、今日はけちょんさんの手のひらに目がない……? 「本体」は描いてるんですか?

けちょん:やめてください、描いてるとか!

ーーすみません、やっと「本体」について飲み込めました……。

朝倉:けちょんは話し方が魅力的だなと思いました。この映画は、女の子たちがワイワイ言いながら、ちょっとのんびりもしつつ、ゆるっとしてかわいいものにしたかったので、死体やアクションやVFX効果もありつつ、ベースの部分はけちょんの話し方のような空気にしてもらいたくて、なるべく無理をしないで話してほしいなと思いました。

朝倉「ちょっとねじ曲がったファンタジーが作れたらいいなと」

ーー『女の子よ死体と踊れ』は、エンディングがとても美しいです。監督はどんなイメージで撮影しましたか?

朝倉:あのちゃんがみんなといたかもしれない1日を最後のシーンとして撮りたいなと思いました。パラレルワールドというか、空間が歪んでいる。みんながいる世界を美しく終わらせるにはどうしたらいいのかなと考えて、踊ってもらうことにしました。楽しくて儚くするために、シャボン玉や花びらを使うことを直前に決めましたね。

ーーそういうイメージはどこから湧いて来たのでしょうか?

朝倉:主人公が女の子ではないけれど、『アリゾナ・ドリーム』という映画でジョニー・デップが歩いてるとピラルクーと遭遇したりして、そういうちょっとねじ曲がったファンタジーが作れたらいいなと思いましたね。

ーー『女の子よ死体と踊れ』は、ゆるめるモ!のファン以外にはどう受け取られると思いますか?

朝倉:まずはファンの方達に届くといいなと思います。でも、ゆるめるモ!のいいところって普遍性の高さだと思っていて、誰にも楽しめる話を作ったつもりなので「ゆるめるモ!を知らないから見ない」とか思わずに見ていただけたらいいなと思っています。

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ようなぴ

ーー『女の子よ死体と踊れ』の見どころを、ゆるめるモ!のメンバーの皆さんから教えてください。

しふぉん:最初から最後まで見て、メンバーの成長が見えるなと試写会で思いました。清掃員としてキャバ嬢役の家に行ったシーンも面白くて発見があるので見てほしいです。清掃会社の社長役が怖くて、リアリティーがあるなと思いました。

ようなぴ:こわかった、女優さんってすごいなと思いました。

あの:ヤクザ役の方に首を絞められてるシーンで、死んでるから痛みを感じないけどビックリしなきゃいけないから、「なにそれ」って難しくて。ヤクザ役の方の顔がすごくて(笑)、近くて、こっちもそういう顔になっちゃって(笑)。ちーぼうと長文のセリフで話すシーンが、撮影のすごく最後のほうにあったけど、みんな集中力が高まってて、長セリフを覚えてやるのは新しい経験で面白かったです。

ーーふだんそんなに集中することはありますか?

あの:あんまりしないです、適当にやればいいやつばっかだから(笑)。

けちょん:清掃会社の社長に遅刻して怒鳴られるシーンで、マジでビビッて車に乗り込めなくて(笑)。すごい演技力だなと思いました。

もね:6人揃ってるシーンが意外とないので、クライマックスの踊っているところに映画全体の集大成が詰まってる感じがします。映画で初見の人がゆるめるモ!のライブを見るとどう思うのかな、すごく知りたいですね。

ようなぴ:「アイドル映画」で終わりじゃもったいないなと思うので、ゆるめるモ!とか関係なく見てほしいです。この6人で過ごす時間が、最後終わるじゃないですか? 6人は途中まで当たり前に一緒の時間を共有してるんだけど、それがなくなってしまうところは普通でもあることだと思うので、日常だと思っていたことが非日常だった、みたいなところを感じてほしいです。

(インタビュー後編「ゆるめるモ!、音楽表現を語る」に続く)

(取材・文=宗像明将/写真=竹内洋平)

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■映画情報
『女の子よ死体と踊れ』

10/31(土)よりシネマート新宿
、11/14(土)よりシネマート心斎橋
、名古屋シネマスコーレ、
12/12(土)より広島・横川シネマ、
12月博多・中洲大洋映画劇場にて上映決定
、以降全国順次公開
主演:ゆるめるモ!(もね けちょん しふぉん ようなぴ あの ちーぼう)
監督・脚本:朝倉加葉子
製作:『ゆるめるモ!』映画製作委員会(キングレコード+日販+アソブロック)
企画・制作:TRASH-UP!!
配給:日本出版販売

2015年/日本/カラー/ビスタ/2ch/70分

公式サイト:http://ymm-film.com/
(C) 2015 YOU’LL MELT MORE! Film Partners

■リリース情報
映画スペシャルCD『女の子よ死体と踊れ』
発売:10月21日(水)
定価:¥2,000+税
<収録曲>
1.あさだ(Movie Version)
2.アーメン(Movie Version)
3.その他のみなさん
4.OO(ラブ)(Movie Version)
5.人間は少し不真面目
※3、5が新曲、1、2、4がリミックス。

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