峯田和伸、『ピース オブ ケイク』単独インタビュー 役者業のこと、仕事論、銀杏BOYZの現在

峯田和伸『ピース オブ ケイク』インタビュー

「本当はなんもしたくない。なんもしないで生きていきたい。曲も作りたくない」

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——ある意味、ミュージシャンの仕事とは真逆ですもんね。ミュージシャン、少なくとも峯田さんのようなミュージシャンは基本的に自分の中にあるものをゼロから発信していくのが仕事だけど、役者の仕事は監督になって自作自演でもしない限り、すべて「受ける」ところから始まりますからね。

峯田:でも、考えてみたら最近は「受けて」ばっかりなんですよ。ミュージシャンとしての仕事も。

——それは、昨年1月に銀杏BOYZの『光のなかに立っていてね』と『BEACH』をリリースしてからは、ってことですか?

峯田:そう。全部受けてる。自分から何かを歌いたい、ステージに立ちたいって思ったことは一回もなくて。考えたら。

——そうだったんだ。

峯田:昨年出したアルバム以外は、基本、全部「受け」。ドラマで「銀杏の曲を使わせてください」って言われたりすることも含めて。

——あぁ、『恋仲』ですね。うん、あれはビックリした(笑)。あのドラマ大好きなんだけど。

峯田:ああいうのって、普通はレコード会社の方からテレビ局にプレゼンをするわけでしょ? 「こういうアーティストがいます」「こういう曲があります」「是非ドラマの中で使ってください」って。

——峯田さんサイドから、そんなことを言ってないことはわかります(笑)。

峯田:全部向こうから「お願いします」だもん。こっちから「お願いします」って言ったことなんて一度もない。来たものに関してはちゃんと返すけど、自分からはまったくなにも動いてない。ライブだって、本当はやりたくないもん。嫌で嫌でしょうがないもん、人前で歌うのなんて。しょうがないからやってるだけで。

——それは昔から?

峯田:うん。人前で歌いたいなんて、一回も思ったことがない。

——もちろん、昨年のアルバムに関しては、あれは「しょうがないからやってる」人が作るような作品ではないということは聴けば誰でもわかりますが、それ以外に関しては、なんにもやらないってわけにはいかないからやってるということ?

峯田:なんもしないとお金も入ってこないし、生きられないし。そこはだから、生活のためにやってるって部分もありますよ。あとは……まぁ、とは言っても、本当にやりたくないような仕事は来ないんですよ。自分が「あ、おもしろそうだな」と思える仕事しか来ない感じはする。別に仕事を選んでるわけじゃなくて。おもしろそうな仕事ばかりが、ヒューって向こうからやってきてる感じ。それは、ずっと自分がそういうスタンスでこれまでやってきたからかもしれないけど。でも、基本的にはなんもやりたくないからさ、俺。

——そうなの?(笑)

峯田:なんもしたくない。なんもしないで生きていきたい。

——だって、曲は作りたいでしょ?

峯田:作りたくない。

——(笑)。

峯田:なんとなく「曲作んなきゃな」「音楽やんなきゃな」ってだけでやってるから。

——本当に?(笑)

峯田:だって、宇野さんどう、やりたい? こんな仕事?

——こんな仕事って(笑)。

峯田:本当にやりたいと思ってやってる?

——峯田さんと同じレベルで仕事について語れるわけがないけど(笑)。うーん、最近ようやくですね、あんまりやりたくない仕事を断るようになったのは。もちろん、スケジュールの都合が合わなくて断ることもありますけど。それだけで、自分の中では大きな進歩。

峯田:へぇー。

——だって、フリーの人間って、仕事は全部受けるのが基本だから。

峯田:そっか。

——理想は「自分じゃなきゃできない」と思える仕事だけをやっていくことですけどね。「これは他の人でもできるんじゃないの?」って仕事と、「これは自分が一番うまくできるかもしれないな」って仕事の違いは、自分の中では常に意識しながらやってますね。

峯田:あぁ、「自分じゃなきゃできない」ってのはそうかも。

——だから、峯田さんのやってる仕事は、「峯田さんじゃなきゃできない」ことだけなんですよ。今回の『ピース オブ ケイク』も含めて。

峯田:あぁ、そうですね。まぁ、20代の頃に「やりたくないことはやりたくないです」って言うのは大変だったけど、自分も37歳になって。もうみんなわかってくれてるんでしょうね。だから、そういう仕事しか来ない。

——ただ、そうなってくると、たとえば今回のトモロヲさんであったり、三浦(大輔)さんであったり、リリー(・フランキー)さんであったり、あるいはかつての自分の上司でもある鹿野(淳)でもいいですけど、そういう以前から付き合いのあった人からのオファーに限られてきちゃいませんか? 若くてこれまで峯田さんと接点のなかった人にとって、峯田さんに何かをオファーするのはなかなかハードルがあるんじゃないかと。

峯田:いや、それが最近、若い人とつるむことが増えてるんですよ。

——あ、そうなんだ。

峯田:音楽では、クリープハイプとも今度一緒にやるし、どついたるねんのイベントにも呼ばれてるし。一昨年までのレコーディングがやっと終わって。あの最中はさ、年上も同年代も含めて、誰とも会おうと思えなかったから。レコーディングが終わってから、やっと穴倉から出てきた感じで。「あー、世の中こんなことになってるんだー」って思って。若い人とも知り合えるようになって。だから、楽しい感じですね、今は。やっぱり新しいことをやってる若い人たちと一緒にいるとおもしろくて。刺激になる。だから、むしろそういう若い人たちとこれからは仕事をしていきたいと思ってますね。

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