江口洋介や本木雅弘らアラフィフ俳優の魅力とは? 『天空の蜂』役柄から考える

『天空の蜂』アラフィフ俳優の魅力

 『天空の蜂』のアラフィフたちは、いろんなものを背負っている。何と言っても、全長34メートル、総重量25トンもの巨大ヘリコプターのビッグBと、その真下にある原発が彼らの敵である。江口演じる湯原はビッグBの設計士として、本木演じる三島は原発の設計士として、危機を回避しないといけない。ぼんやりしたり失敗したりしてはいられないのだ。特に江口は、この危機を救うために、『ミッション・インポッシブル』のトム・クルーズ張りのアクションも演じている。

 ビッグBと原発に対峙するのは、何も江口や本木だけではない。“天空の蜂”と名乗るハイジャック犯を追う刑事を演じた江本明(66)、原発の所長を演じた國村隼(59)演じる原発の所長、そのほか佐藤二朗(46)、光石研(53)、手塚とおる(53)、竹中直人(59)、石橋蓮司(74)、そして唯一のアラフォーである、やべきょうすけ(41)など、大人の俳優たちそれぞれに、それぞれの葛藤と役割があるのも映画の魅力である。江本演じる刑事の発する「これは俺たちの仕事だ!」というセリフや、江口演じる湯原の「でもやるんだよ!」という、根本敬の『因果鉄道の旅』を彷彿させるセリフも印象深い。

 ちなみに、綾野剛演じる謎の男や、原作にはなかったが、重要な役を演じる向井理といったアラサー俳優陣や、航空自衛隊員を演じた永瀬匡(22)、江本明演じる刑事の部下を演じた落合モトキ(25)も、映画の中でそれぞれが、仕事をまっとうしている。この作品は、さまざまなキャラクターが、やるべきことをやる姿が描かれた映画だともいえるだろう。

 劇中の江口洋介は、巨大ヘリと原発に立ち向かうために、技術者であるというのに、果敢に現場に乗り込み危機を救う。その姿に迷いがないのを見て、これはヒーローになることに照れのあるアラフォー世代ではなく、そんな照れを感じないアラフィフが演じて輝くタイプの映画だなと感じた。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『天空の蜂』
9月12日(土)全国ロードショー 
出演:江口洋介 本木雅弘 仲間由紀恵 綾野剛 國村隼 柄本明
光石研 佐藤二朗 やべきょうすけ 手塚とおる 落合モトキ 松島花 向井理 竹中直人 石橋蓮司 他
監督:堤幸彦
原作:東野圭吾「天空の蜂」(講談社文庫)  
脚本:楠野一郎
音楽:リチャード・プリン
主題歌:秦 基博「Q & A」(オーガスタレコード/アリオラジャパン)
制作:オフィスクレッシェンド
企画/配給:松竹
(C)2015「天空の蜂」製作委員会

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