園子温が語る、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に負けない日本映画の戦い方

園子温が語る、日本映画の戦い方

「映画を好きになりたいし、映画に恋をしたい。それが一番大事」

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――『映画 みんな!エスパーだよ!』は5月下旬にクランクアップして、9月公開という超タイトなスケジュールでしたが、今後もそのサイクルで制作を続けていくのはしんどくないですか?

園:今年はあと3本撮って、来年も春先までに2本撮る予定ですけど、ずっと続くわけではないんです。しばらくこの状態が続くだけで。ただ、深作欣二さんは黄金期に1年で4、5本撮っていて、『仁義なき戦い』5部作もほぼ1年で作ってる。その早撮り感が画面にみなぎってるのが好きなんです。毒々しいまでの刹那を生きたあの雰囲気は、やっぱり日本映画の特異点だと思いますね。完成度の高い作品より、隙だらけなもののほうが面白いし、愛せるかなと。

――園さんは以前から、「いい映画」より「好きな映画」のほうが大事だという考え方でしたね。

園:誰が何と言おうと、「好き」以外ありませんね。映画を好きになりたいし、映画に恋をしたい。それが一番大事です。

――これまでの園さんの作品は、日本のメジャー映画に対するアンチテーゼとして支持されていた面もあると思いますが、『新宿スワン』は園子温映画史上最高の大ヒットを記録して、いまや園さん自身がメジャー映画を撮る立場になったわけです。その点で考え方の変化はありましたか?

園:一回やってみなきゃなと思ってたんですよ。僕は常に実験的な気持ちで映画を撮っていて、前と180度違うものを撮りたいと思うことがよくあるんです。オファーがあった時期は、『新宿スワン』を撮るか、あるいはもう一度『愛のむきだし』みたいなものを撮るかと聞かれれば、『新宿スワン』のほうに興味があった。同じものをくり返すことに興味がないんですね。言っちゃえば『愛のむきだし』はガウディみたいに奇天烈な建物で、片や日本のブロックバスターはちっともデザインにこだわらないけど、とりあえず老若男女が快適に住める建物。そういうものを、自分らしい意匠をひとつも入れずに、かっちりと作ってみたかったんです。結果的にそれがヒットしたことで、部屋も満室になってよかったなと(笑)。だから敢えてですよ。自分としては『希望の国』の後に、ガラリと変わって『地獄でなぜ悪い』を撮ったのとあまり変わらない。プロデューサーの山本又一朗さんから「コラ!」と脅されて作ったわけでもないですし。楽しかったですね。又さんもいままでの監督の中で一番面倒臭いことになると思っていたら、むしろ一番楽だったと言っていて、このままだと『ルパン三世』もやらないかと言われかねないくらい(笑)。

――いまや同志ですか(笑)。

園:又さんにとっては、たぶんソウルブラザーですよね。これからも俺と映画を撮ってくれとは言われてるんですけど。

――その方向性と、今後のアートハウス系がブレンドされていくことはないんですか?

園:それはないです。一見、住みやすいマンションなのに、テラスを見たら地獄みたいな池があるとか、そういうのはダメだから(笑)。完全に分けないと。どんな作品でもテーマをきちんと決めて、作品をそこに落とし込んでいかないといけないんですね。例えば映画監督がテレビドラマを撮ると、そこに映画的な何かを盛り込もうとしがちじゃないですか? でもそういうのは全然好きじゃなくて、『時効警察』の時もとにかく視聴率を取ることが自分の使命だと思っていた。そういう意味では、『新宿スワン』もテレビドラマを手掛けるような気分で、人気作を作ってやるという思いから燃えてたんです。

――なるほど。お話を聞いていて思い出したのは、園さんの転機になった『自殺サークル』も敢えてZ級のスプラッターを撮るんだとテーマを決めて、自分の趣味嗜好とは関係なく、そこに向って作られた作品だったことです。園さんの中には、監督・園子温に「これを作るべきだ」と指示を出す、もうひとりのプロデューサー・園子温がいるということですよね。

園:いると思います。『自殺サークル』は絶対に座れない椅子とか絶対に持てないコップみたいなものを作ろうとした、ほとんど嫌がらせのような映画でしたけど(笑)、そうやって自分をプロデュースする感覚は絶対にあると思う。でも『新宿スワン』みたいに快適なマンションを何棟も建てる気はないし、もうお金もいらないので、ああいう作品は終わりです。続編がある場合は置いといて(笑)。

――これから向かおうとしているのは、いろいろなタイプの作品を経て、園さんが最終的に見出した方向性ですか?

園:最終的に向かっていきたい方角はなんとなく見えてるけど、それが本当に自分の資質に合っているかわからないので、結局は撮り続ける果てに最終的な何かが待ってるんじゃないかと思うだけですね。でも、まだまだ自分は初期の段階というか、始まったばかりのような気がします。まったくダメだし、これからだと思ってますよ。

(取材・文=門間雄介/写真=編集部)

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■公開情報
『映画 みんな!エスパーだよ!』
9月4日(金) TOHOシネマズ 新宿 他 全国ロードショー
原作:若杉公徳「みんな!エスパーだよ!」(講談社『ヤンマガKCスペシャル』所載)
監督:園子温『ヒミズ』『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』
出演:染谷将太 池田エライザ 真野恵里菜 マキタスポーツ 高橋メアリージュン 安田顕
配給:ギャガ
公式サイトURL:esper-movie.gaga.ne.jp
(C)若杉公徳/講談社 ©2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会

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