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天賦の才能を与えられたシンガー……スリム・スミスを形容するのに、これほどピッタリな言葉はない。当時のジャマイカではアメリカンR&Bが絶大な人気を誇っており、中でも地元ミュージシャンの憧れといえば、インプレッションズを率いていたカーティス・メイフィールドだった。そこで、スカ〜ロック・ステディ期のジャマイカでは、カーティスを意識したシンガーが量産されるわけだが、スリム・スミスのファルセット・ヴォイスは目をつむって聴いていればカーティス本人と聞き違えるほど群を抜いたものだった。
10代という若さで、コーラス・グループ「ザ・テクニークス」のリード・ヴォーカルとして数々のヒットを連発。好んでインプレッションズのカヴァーをプレイしていた。後にソロ・シンガーに転向。自信がみなぎるヴォーカルには、歓喜と苦悩が同時に存在し、珠玉の名作を生んでいる。ソロと平行してロック・ステディ・コーラス・グループ「ユニークス」にも参加し、ゴスペル・フレイヴァーの甘いラヴ・ソングを残した。70年代には市民権獲得運動へのオマージュを綴った「Stand Up and Fight」といった政治的関心を歌に反映するようになるが、それはレコード売り上げのほとんどをプロデューサーが搾取するという、当時の音楽業界の劣悪な状況が背景にあったためだ。
スリムをはじめボブ・マーリィほどの大スターも含めて多くのミュージシャンは、この状況を打破しようと奮起するが、これが改善されたのはずっと後になってからのこと。そして73年、「その時が来た」というフレーズが印象的なシングル「The Time Has Come」をレコーディングした直後、自らの手をガラス窓に打ち付け、命を絶つ。スリム・スミス25歳、天才シンガーのあまりにも早すぎる最期であった。

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