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ビリー・ホリデイの後を継ぐ、女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家の一人、サラ・ヴォーン。3人のなかで最も深み/粘りのある声を披露し、その大柄な体格から生み出される声量はオペラ並みだった。ユッタリ/タップリ謳うその様は、まわりの空気/雰囲気すべてを呑み込み、たゆまぬ流れを湛える大運河のようである。そんな彼女を当時の聴衆は、ジャズ・ヴォーカリストの枠を超越した“ザ・シンガー”と賞賛した。
24年ニュージャージー州生まれのサラは、45年にソロ歌手としてデビュー。その後、47年〜51年までダウンビート誌の女性歌手部門で1位の座をキープした。年代別に彼女の代表作を追っていくと、49年〜53年の<CBS>時代には、マイルス・デイヴィスとのセッションを含む『イン・ハイ・ファイ』や、ベスト盤ともいえる『アフター・アワーズ』が一押しである。また54年〜59年の<マーキュリー>時代は高水準な演奏が多く、クリフォード・ブラウンやキャノンボール・アダレイとの共演盤もあるが、特にカウント・ベイシー楽団をバックに従えた『ノー・カウント・サラ』が素晴らしい。そして70年代の作品においては、中野サンプラザでのライヴ盤『ライヴ・イン・ジャパン』が群を抜いている。——78年に<パブロ>に移ってからの作品では、『クレイジー・アンド・ミックスト・アップ』が注目作。ここでは超ド級スタンダードの「枯葉」を、彼女らしいニュアンスでユニークに謳いあげているのが興味をそそる。——90年死去。

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