渡辺貞夫の記事・ニュース・画像一覧

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『Joy of Sounds in the world』———これは渡辺貞夫(以下ナベサダ)が自らホスト役になり85年から毎年開催しているコンサートの名称だ。「食事を楽しみ、音楽を楽しみ、人生を楽しむ場を提供していきたい」という思いと、本人の“生き方”に対する願いがこの言葉にこもっている。
彼の音楽にはじつにワールドワイドな世界がある。簡単にたどると、音楽の根本になる初期のストレート・アヘッドなジャズ/アメリカ留学中に出会ったボサ・ノヴァをはじめとするブラジル音楽/時代背景にともなったフュージョン/72年の訪問がきっかけとなったアフリカ音楽——といった流れ。その全てがナベサダの要素である。現在では、アフリカの風景(大地と空と人が原初のままリズムを刻んでいるような)と、より自然に音楽を楽しみたいという気持ちがシンクロするのか、アフリカ音楽が一番しっくりきているようだ(近作『SADAO 2000』ではリチャード・ボナなどのアフリカ系ミュージシャンと共演)。
すでに日本において世界で通用するジャズ・アーティストの筆頭だが、それはプレイ内容だけではない。プレイする姿はもちろん、楽器を持ってたたずむ姿、やわらかい物腰、そして笑顔——彼の本質は、『ウゴウゴルーガ』に出演していたときに、子供たちに見せていた優しい笑顔と眼差しにあるような気がしてならない——そのすべてが人を魅了する。世界中を旅してさまざまな人/音楽/文化と出会ってきた、人生そのものがそこに見え隠れするからであろう。だからこそ、日本のジャズ・シーンにおいて音楽だけでなく、その存在自体がアーティスティックなのではないだろうか。

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