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三上寛

(ミカミカン)

三上寛ほど、「異端」という形容が似合うアーティストもいないだろう。三上の音楽はフォークでありロックであり演歌(怨歌)でありパンクでありジャズでありブルースでありソウルであり前衛である。単なる歌であることを超え、魂の奥底からわき上がる絶望と怨念を叩きつける三上のヴォーカルは、音楽が人間存在の実存とどれだけ激しく交歓できるかという証でもある。
三上は1950年、青森県津軽小泊村生まれ。警察学校中退後、上京し、音楽活動を始める。71年4月、アルバム『三上寛の世界』を発表。同年の中津川フォーク・ジャンボリーでの伝説的なライヴ・パフォーマンスで一躍脚光を浴びる。同じ青森出身の寺山修司のセンスと、そしてやはり同郷で、同じ年の「連続射殺魔」永山則夫の情念を往還するような衝撃的な詞世界は、三上以外ではありえない個性だった。メッセージ・フォーク全盛の日本のシーンにおいて、三上寛、遠藤賢司、南正人の3人こそが、メッセージの直接性を超えた日本独自のフォーク/ロックの道を切り開いた最大の功労者と言っていいだろう。
以降、山下洋輔トリオを交えてのジャズ・フォークを展開した『BANG!』(74年)など幾多の傑作を次々と送り出すいっぽう、俳優としても、寺山修司監督『田園に死す』(74年)を皮切りに20本近い映画に出演、映画音楽も手がけるなど幅広く活動した。
ところが82年を最後に三上は8年もの間、レコーディング活動から遠ざかってしまう。歌詞を始め過激さと先鋭性を増すばかりの三上の音楽と、規制を強める既存の音楽産業との折り合いがつかなかったことが原因と思われる(三上は、今後も規制の強いメジャー・レーベルから作品を出す気はないと公言しているようだ)。
しかし90年に、ノイズやフリー・ジャズのリリースで知られる<PSF>から怒濤のリリース・ラッシュを開始する。精力的に展開されるライヴ活動、吉沢元治/ジョン・ゾーン/片山広明/明田川荘之/山下洋輔/遠藤ミチロウ/友川かずきなどとの数々のコラボレーション、石塚俊明/灰野敬二とのバンド「VAJIRA」での活動など、空白に終わった80年代から一転して、90年代の三上はまさに八面六臂の活躍ぶりを見せるのである。
00年3月には、音楽活動30周年記念の13枚組『三上寛ボックス』を発表。11月には自伝『三上寛 怨歌に生きる』を刊行するなど、その活動にはいささかの衰えも見られない。最新作は石塚俊明との共作『紳士の憂鬱』(01年)である。 (小野島 大)

制作協力:
OKMusic

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