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フィラデルフィア発、全米を代表するヒップホップ・バンド、ザ・ルーツ。その元メンバーがラゼールだ。彼のアビリティは口で楽器の音を奏でること。それは単にお遊びやイロモノ的なパフォーマンスではなく、重厚なドラム・ビートやスクラッチ、サウンド・エフェクトなど、本物の音と比べてもなんら遜色ないほどリアリティがある音を、完全に楽曲の一部として機能させるのである。さらに、ラゼールは自らの声だけでサウンドを構築してしまう荒技も持っている。ビートを始め、ベース・ラインやホーン・フレーズなど、同時に数種類(約8種類は同時に出せると筆者が以前インタビューした時に言っていた)の音を発し、リスナーを圧倒するのだ。まさに人間国宝に指定したいぐらいの稀有な才能である。
ラッパーとしての技量も相当なもので、それはザ・ルーツの諸作やソロ・デビュー作『メイク・ザ・ミュージック2000』(99年)や2nd作『ラゼールズ・グレイテスト・ノックアウツ』を聴けば明らか。滑舌よくリズムにキッチリ合わせたり、時にはハズし気味なライミングをするなど、実にメリハリのある展開を見せつけてくる。そして、正統派ヒップホップからR&B調のものまでヴァラエティに富んだサウンドと絡み、さまざまな表情の楽曲群で愉しませてくれるのだ。それも生粋のN.Y.オールドスクーラー(彼はそうなのだ)であるラゼールの素晴らしさである。
ちなみにあの日本人ヒューマン・ビート・ボクサーのAFRAはラゼールのライヴ・パフォーマンスを観てヒューマン・ビート・ボックスを始めたのだ。師弟関係にあるそのふたりが一緒にライヴ・ステージに立っているところを観たことがあるが、口技と口技の対決&ハーモナイズは、それはそれはエクセレントなモノだった。

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